Book Review ビジネス

なぜ、賢い人が集まると愚かな組織ができるのか?

カール・アルブレヒト — ダイヤモンド社

組織判断、人事、労働環境・・こういったテーマにまたがる本です。

重要な決定を下そうとして、10人を集めても、ひとりに比べて10倍優れた結論を引き出せるとは限らない。むしろ、切れる人物がひとりで考えた方が、よほど冴えた結論に辿り着くかもしれないのだ。なぜなら、判断というのは理屈をもとに下されるのではない。性格、感情、好き嫌い、利己的な動機、表に出せない表情、対抗心、誤った情報、そして頑なさなどにも影響されるのだ。得てして、我を通そうとする姿勢が幅を利かせるため、理屈に合った意見を述べ耳を傾けようと高尚なプロセスは捨て去られる。重要な判断を下すというのは、知的な営みであるだけではない。さまざまな人間関係や思惑が交錯する場合が少なくないのだ。

グループシンク(集団思考)の具体例。
・ベトナム戦争の泥沼を拡大したリンドン・ジョンソン大統領の決定
・スペースシャトル<チャレンジャー>の大惨事を招いた技術上の判断
・ピッグス湾事件でのケネディの決定

「大切なのは誰が正しいかではなく、何が正しいかだ。」トマスハクスレー

グループシンクの要因
・極度の緊張
・確かな判断プロセスが存在しない
・リーダーが混迷を避けようとする
・一部の人々が徒党を組む
・力でねじふせようとする動きがある

説得力あるステートメントを作成するコツ
・どのような人々、企業に利益をもたらすのか?
・どのような価値をアピールしていくか?
・自社ならではの業務手法は何か?

チェンジ・エージェントが守るべき10の原則
・クライアントに利益をもたらす
・人々とともに額に汗する
・診断してから処方箋を出す
・地に足をつける
・できれば痛みの少ない方法を選ぶ
・むやみに何かを変えようとしない
・有力者の後ろ盾を得よう
・手法に溺れるな
→状況にあったソリューションを探すように努める
・無理をしすぎない
・生き延びろ!
→社内政治に巻き込まれない。真の勝者は戦わずして勝つ(老子)


◆コメント
タイトルは、問いに対するアンサーを直接的に説明するものではないのでややミスマッチです。大事なのは、組織の知性を高めるには?という問いです。それを考えるにあたって、まず「組織が力を発揮できない要因を「愚かになる条件」として著者の経験から間接的にまとめています。

 グループシンクの要因の指摘は実体験と一致することもあり納得感がありました。
記憶に新しいのは、ニデックの不正会計でしょう。まさに永守さんからの強烈なプレッシャー、緊張が、不正につながりました。

詳しくは下記の第三者委員会の調査報告書をご覧ください。

世界を代表する日本企業。日本で珍しいM&Aを積極的に行い、社員をリストラせずにここまで拡大してきた永守さんの経営手腕。しかし、引き際でこの不正会計の発覚。企業に内部監査部門がありリスクが抑えられていたにもかかわらず、それを凌駕するプレッシャーということです。

当委員会の調査の結果発見された会計不正は、いずれも、業績目標、特に営業利益目標
の達成に向けた強すぎるプレッシャーを背景に行われた不正であった。
「業績目標の設定及び管理の方法」第三者委員会の調査報告書の公表

永守氏は、どこよりも早く決算発表をすることを信条としていた。決算スケジュールが遅延すること
は、ニデックにおいてはあり得ないことであり、永守氏の逆鱗に触れることは明らかで
あったため、決算スケジュールに間に合わせることを最優先に対応していた。」
会計不正事案への対応第三者委員会の調査報告書の公表

数字達成のために、生きているのか?
投資家のために、生きているのか?
顧客のために、生きているのか?

短期的に数値を達成しても、後で複数のステークホルダーへ迷惑をかけることになります。
資本主義の仕組みは、現状維持をよしとせず、「少しでも明日をよくする」方向で動きますが、
その中でも「ちょっと待った」と言える人が増えるにはどうすればいいのか。

第三者委員会の提案では、社外取締役についてまとめられています。
外部の意見や目を取り入れるという方向です。

日々固定された同じメンバーだけで行うのでなく、「弱い紐帯」を組織に取り入れる。
関係性をほぐす。そういったことが不正の温床を減らす打ち手になるでしょう。