DXとは?デジタルトランスフォーメーションの本質と日本企業の課題

マーケティング

世界的なコンサルティングファームのマッキンゼーからCOVID19下で緊急提言された『デジタル革命の本質:日本のリーダーへのメッセージ』。この緊急レポートで挙げられた内容を踏まえてDXを推進していくことが重要になります。

この記事はこんな人におすすめ

  • DXという言葉は聞いたことがあるが、正しく理解していない人
  • 単なるIT導入とDXの違いを知りたいビジネスパーソン
  • DX推進を迫られている経営層や担当者
  • マッキンゼーの提言内容を踏まえた日本企業の課題を理解したい方

記事の概要

DX(デジタルトランスフォーメーション)とは、単なる業務のデジタル化(デジタイゼーション)や効率化にとどまらず、デジタル技術を活用して企業のビジネスモデルや組織文化そのものを変革することを指します。マッキンゼーの緊急提言でも、日本企業はDXを「生き残り戦略」として捉えるべきだと強調されています。


この記事を読むと変わること(Before / After)

BeforeAfter
DXがIT導入の別名だと思っているビジネスモデル変革まで含むことを理解できる
DXの必要性を漠然としか認識していない日本企業の課題と世界の潮流を理解できる
DXの進め方が分からない推進のポイントを学べる

DXとは?(定義)

経済産業省の定義1によれば、「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、製品やサービス、ビジネスモデルを変革し、競争優位性を確立すること」 がDXです。

さらなるDXの定義の源流は、2004年スウェーデンのウメオ大学教授エリック・スタルターマンらが発表した論文「Information Technology and the Good Life2」で使われた定義です。

The digital transformation can be understood as the changes that the digital technology causes or influences in all aspects of human life.(Erik Stolterman)

先で紹介したマッキンゼーのレポートでの意訳は上記を「IT の浸透が、人々の生活をあらゆる面でより良い方向に変化させる」としています。

原義に即すと、以下になります。

文法構造の分析

  1. The digital transformation
    • 主語(S):「デジタルトランスフォーメーション」
  2. can be understood
    • 受動態の助動詞表現(V):「理解されうる」
  3. as the changes …
    • 補語(C):「〜として」
    • understood as … = 「〜として理解される」
  4. the changes that the digital technology causes or influences
    • 「デジタル技術が引き起こす、または影響を与える変化」
    • ここで that は関係代名詞 → 「the changes」を修飾
  5. in all aspects of human life
    • 前置詞句(修飾語):「人間生活のあらゆる側面において」

日本語訳(直訳)

「デジタルトランスフォーメーションは、人間生活のあらゆる側面において、デジタル技術が引き起こす、または影響を与える変化として理解することができる。」


日本語訳(意訳)

「デジタルトランスフォーメーションとは、人間の生活のあらゆる領域で、デジタル技術が生み出す、あるいは影響を及ぼす変化のことだと理解できる。」

元々の意味は、ビジネスモデル等の言及はなく、拡張されたものであるといえます。また日本で多く言及されているDXは、経済産業省の定義に則して考えるとよさそうです。ただし、行政や教育の文脈でDXを利用することもあるので適宜確認が必要です。

どの文脈において大事なことは『変化=Change』だと考えます。

何に対するどんな変化?自分たちの生活暮らしへの変化。(Who,What,Whom)
今どうなっていて、これからどうなるといいの?(Before/After)
なぜ変化しなければならないの?(Why)
いつ、どう実現するの、その予算は?(When、How、How much)


こういったことを常に考えていく必要があります。


DXの特徴(マッキンゼー提言より)

マッキンゼーの提言3ではさらに、以下が強調されています:

  • DXは「単なるデジタル化」ではなく「競争のルールを変える変革」
  • コスト削減だけでなく、新たな収益源の創出を目指すべき
  • デジタル人材の不足が日本企業の大きな課題
  1. スピードの重要性
    • DXは「待ったなし」。意思決定を迅速に進める必要がある。
  2. 全社的な変革
    • 部門ごとのシステム導入ではなく、経営戦略に直結させるべき。
  3. 顧客中心の価値創造
    • デジタルは顧客体験を変えるための手段であり、目的化してはならない。
  4. 人材と組織文化
    • デジタル人材の確保・育成が最大のボトルネック。
    • 失敗を許容する文化が必要。

なぜDXするの?|DXが必要な背景

環境が変わり、生存するために変化に適用する必要があるからです。
ではどんな環境の変化があるのか?主な変化は以下です。

急速なデジタル技術の進化

  • AI、クラウド、IoT、5Gなどの技術が急速に普及。
  • デジタルを活用できない企業は、競争から取り残されるリスクが高まっている。

顧客行動の変化

  • スマートフォンやECサイトの普及により、顧客は「いつでも・どこでも・自分に合った」サービスを期待。
  • デジタルで顧客体験を改善できない企業は、選ばれなくなる。

グローバル競争の激化

  • GAFAや新興デジタル企業が業界の垣根を超えて参入。
  • 日本企業は従来のビジネスモデルのままでは競争力を維持できない。

日本特有の課題(マッキンゼー提言より)

  • デジタル人材不足:専門人材が世界的に不足、日本は特に遅れ。
  • 組織文化の硬直性:失敗を恐れる文化が変革を阻害。
  • IT投資の偏り:保守運用に予算の8割以上が使われ、変革に回せていない。

COVID-19による加速

  • リモートワーク、オンライン消費、非接触サービスが一気に普及。
  • マッキンゼーの提言でも「パンデミックがDXの加速装置になった」と指摘。
  • DXは「将来の課題」ではなく「今取り組むべき緊急課題」として浮上。

将来破綻する未来が現実になっているから(個人的意見)

日本においては、人口減少が目先の大きな課題です。特に生産年齢人口が減少する一方で高齢者が増えることで今までの社会保険制度やインフラ整備4などの仕組みが回らなくなります。回らなくなることは、今までの暮らしができなくなるということです。

具体的な数字で述べると、年間55万人以上のペースで人口減少5しています。これは鳥取県の人口が553,407人6ですので、1年後に鳥取県の人がいなくなることと同じです。実際には各県でまばらに減っているので実感は得にくいですが、妄想ではなくすでに起きている事象です。

今のペースでいけば間違いなく諸々の制度が破綻するのです。その代表は公的年金制度です。これはまさに論理的破綻しています。現在の日本の公的年金は、基本的に「賦課方式」で運営7されており、現役世代が納めた保険料は、そのときの年金受給者への支払いにあてられています。
今後現役世代が少なくなれば、上にいる方の年金を支払うことは難しいでしょう。

我々は穴の空いた日本船に乗っている、穴の空いたビニールハウスの中にいるようなものです。

これを食い止めるには、一人の人間ができることを増やしていくことが重要です。(移民を増やすという手段もありますが、犯罪が増えるなどのデータがあり議論が必要です。もちろん出生率を高めることも現実的ではありません。)

人材不足の観点では、今まで1つの仕事をしている人がテクノロジーを駆使して2つ、3つとこなせると良いわけです。そして、問題はブルーワーカーの仕事ですから、ホワイトカラーの人材が仕事を効率化し、農業やインフラ等のリアルな仕事に関わっていくことが大事です。今まで8時間かかっていた仕事を4時間で終わらせて、もう一つの仕事先で4時間で働いて同じ価値を出せば、一人あたりの生産性は高くなります。給料も増やして税収を上げる。

昭和世代に定められた週休2日8、労働時間8時間制から脱却していくことが未来に対して必要です。
結局は時間で働くのではなく、皆が価値ベースの仕事にシフトしていくことが大事です。

DXの活用事例

  • 小売業:ECと実店舗を統合し、顧客の購買データを活用したパーソナライズ戦略。
  • 製造業:IoTセンサーで稼働データを収集し、予知保全や生産最適化を実現。
  • 金融業:スマホアプリを軸とした非対面チャネル強化、データ活用による与信モデル改善。
  • 医療業界:オンライン診療や電子カルテ連携による医療サービスの効率化。

最近では、行政のDX9にも注目が集まっています。
下記は、経済産業省HPから引用した画像です。


DXのメリット・デメリット

項目メリットデメリット
競争力新規事業創出、顧客体験向上成果が出るまで時間がかかる
効率化業務プロセスの自動化、コスト削減初期投資が大きい
人材デジタル人材の育成で組織力強化人材不足が深刻
スピード市場変化への即応経営層の意思決定遅延で頓挫リスク

DX推進のステップ(マッキンゼー提言に基づく)

  1. ビジョン設定:デジタルをどう経営に組み込むか明確化する
  2. 顧客体験の設計:顧客価値を最大化するデジタル戦略を描く
  3. テクノロジー基盤の整備:クラウド、データ基盤、AI活用を進める
  4. 人材育成と文化改革:デジタル人材の確保、アジャイル文化の導入
  5. スピーディな実行:PoC(実証実験)から素早く本格導入へ

よくある質問(FAQ)

Q1. DXとデジタル化の違いは?
→ デジタル化は業務の効率化、DXはビジネスモデルや企業文化の変革まで含みます。

Q2. DXは大企業だけのもの?
→ いいえ。中小企業にとっても競争力を維持するために不可欠です。

Q3. DX推進で最も大事なことは?
→ 技術導入ではなく「経営戦略と組織文化の変革」が核になります。
単なるのツール導入や既存業務の置き換えだけではなく、戦略と組織に紐づけて考えることが大事です。古典的なフレームワークとなりますがアンゾフの3Sが大事になります。


まとめ

  • DXとは、デジタル技術で企業のビジネスモデルを変革すること
  • マッキンゼー提言は「スピード」「顧客中心」「人材育成」の重要性を強調
  • 日本企業は「単なるデジタル化」から「全社的DX」へとシフトする必要がある

参考文献


  1. デジタルガバナンス・コード2.0 ↩︎
  2. Information Technology and the Good Life ↩︎
  3. DXとは?デジタルトランスフォーメーションの本質と日本企業の課題 ↩︎
  4. 急がれるインフラ更新 建設後50年超の劣化設備が急増 ↩︎
  5. 日本の総人口約1億2433万人 55万人減少 ↩︎
  6. 総務省統計局「統計でみる市区町村のすがた2024↩︎
  7. 日本の公的年金は「賦課方式」を基本にしています ↩︎
  8. 週休2日「松下電器起源説」を追う ↩︎
  9. 経済産業省のDXとは ↩︎

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