PICOとは?EBMを支える臨床疑問の構造化フレームワークを徹底解説

コンサルタントの道具箱

この記事はこんな人におすすめ

  • 医学研究や臨床研究に携わる医療従事者
  • EBM(Evidence-Based Medicine:根拠に基づく医療)を実践したい医師や看護師
  • 論文検索や臨床疑問を整理するフレームワークを探している人
  • 医学部や大学院で研究手法を学んでいる学生

記事の概要

PICOとは、臨床疑問を整理し、エビデンスを効率的に検索するためのフレームワークです。

  • P(Patient / Population):対象患者・母集団
  • I(Intervention):介入
  • C(Comparison):比較(対照群)
  • O(Outcome):評価項目・アウトカム

研究課題を明確化し、論文検索の効率を高めるために用いられます。


この記事を読むと変わること(Before / After)

BeforeAfter
臨床疑問が漠然としている4つの要素で明確に整理できる
論文検索が効率悪いPICOを使って検索式を構築できる
エビデンスの質を評価できない臨床に即したエビデンスを抽出できる

PICOとは?(定義)

PICOは臨床疑問を「誰に、何をして、何と比べて、何を評価するか」で構造化するフレームワークです。

  1. P(Patient / Population)
    • 例:高血圧の成人患者
  2. I(Intervention)
    • 例:新しい降圧薬の投与
  3. C(Comparison)
    • 例:従来薬の投与、プラセボ
  4. O(Outcome)
    • 例:収縮期血圧の低下、心血管イベントの減少

この4つを組み合わせることで「臨床疑問(Clinical Question)」を具体化できます。


PICOの起源

  • 1990年代、カナダのマクマスター大学を中心に発展した EBM(根拠に基づく医療) の教育で導入。
  • Gordon Guyatt教授らがEBMの概念を体系化する中で、臨床疑問の定式化にPICOが活用されるようになった。
  • 以来、世界中の医療教育・研究に取り入れられ、現在ではガイドライン策定やシステマティックレビューにも必須の枠組みとなっている。

PICOの活用事例

事例1:新薬の効果を調べる

  • P:糖尿病患者
  • I:新しい経口薬
  • C:従来薬
  • O:HbA1cの改善、低血糖発作の頻度

事例2:看護ケアの効果検証

  • P:術後患者
  • I:早期離床プログラム
  • C:標準ケア
  • O:合併症発生率、在院日数

事例3:公衆衛生分野

  • P:中学生
  • I:禁煙教育プログラム
  • C:教育なし
  • O:喫煙開始率

PICOのメリット・デメリット

項目メリットデメリット
明確化臨床疑問を具体的にできるシンプルすぎて複雑な疑問には不十分
検索性論文検索式を組み立てやすいPICOの定義が曖昧だと検索精度が下がる
汎用性医学だけでなく看護・薬学・公衆衛生に応用可能定性的研究や探索的研究には向かない

PICOのビジネス応用

1. マーケティング施策の検証

  • P(Population)顧客層
    → 例:20代女性のオンラインショッピング利用者
  • I(Intervention)施策
    → 新しいLP(ランディングページ)のデザインを導入
  • C(Comparison)比較
    → 従来のLPをそのまま使用
  • O(Outcome)成果
    → CVR(コンバージョン率)の改善

A/Bテストの設計に近く、PICOで整理すると検証の枠組みが明確になります。


2. 人事・組織開発

  • P:新入社員
  • I:メンター制度を導入
  • C:OJTのみで研修
  • O:定着率や早期離職率の改善

「制度導入が本当に成果につながったか」を比較可能に。


3. プロダクト開発

  • P:既存ユーザー(例:アプリ利用歴1年以上)
  • I:新しいUI/UX改善を導入
  • C:従来のUIを維持
  • O:利用時間の増加、解約率の低下

仮説検証型の開発(Lean StartupやMVP検証)にもPICOは役立つ。


4. 営業戦略

  • P:中小企業の経営者
  • I:コンサルティングパッケージA
  • C:従来サービスB
  • O:成約率・顧客満足度の向上

営業手法の比較検証にも応用可能。


PICOをビジネスに使うメリット

  • 問いを明確化できる「誰に」「何をして」「何と比べて」「どんな結果を狙うか」が整理される
  • 施策の因果関係が可視化される:成果が「偶然」か「施策によるもの」かを切り分けやすい
  • エビデンスベースの意思決定:直感や経験に頼らず、検証的に施策を進められる

PICOの応用形

  • PECO:Exposure(曝露)を加え、観察研究に対応
  • PICOT:Time(期間)を追加し、追跡研究に対応
  • PICOTS:Study design(研究デザイン)を追加し、レビューやガイドラインに活用

よくある質問(FAQ)

Q1. PICOは医学以外でも使える?
→ はい。看護学、薬学、心理学、公衆衛生、ビジネスなど幅広く応用されています。

Q2. PICOを使うと論文検索はどう変わる?
→ キーワードをP・I・C・Oに分解して組み合わせることで、効率的に検索できます。

Q3. PICOが向いていない場面は?
→ 定性的研究や探索的研究など、「比較」が存在しない問いには不向きです。


まとめ

  • PICOとは、臨床疑問をP(患者)・I(介入)・C(比較)・O(アウトカム)で構造化するフレームワーク
  • 起源は1990年代のEBM教育で、Guyattらによって普及
  • 新薬評価、看護ケア、公衆衛生まで幅広く活用可能
  • 派生形(PECO、PICOT、PICOTS)もあり研究の種類に応じて使い分けられる

参考文献

臨床家のための研究のすすめ:実践編
論文の読み方
ミニレクチャー「文献検索そもそも論」

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