大学での論文で頭を悩ませるのが研究テーマについてです。どのように研究テーマを考え、磨きあげていくべきか?について考える方も多いのではないでしょうか。今回は磨き上げのフレームワークであるFINERについてまとめます。医学研究デザインですが、私自身は、分析や新規事業テーマの参入にも関連する大事な観点だと考えています。ビジネス分野の方もぜひ参考にしてください。
この記事はこんな人におすすめ
- 卒論・修論・博士論文の研究テーマが決まらず悩んでいる学生
- 医学・看護・公衆衛生・社会科学などで研究計画書を作成中の人
- 研究指導で「テーマが弱い」「広すぎる」と言われた経験がある人
- FINER基準を知っているが、実務で使えていない人
記事の概要
- 研究テーマの良し悪しは「思いつき」ではなく基準で判断できる
- FINERは、研究テーマを客観的に評価するための世界標準フレームワーク
- 本記事では
- FINERの正確な定義
- 各要素の具体例
- ダメなテーマ/良いテーマの違い
- 研究計画書に落とす実践手順を体系的に解説する
この記事を読むと変わること(Before / After)
| 観点 | Before(読む前) | After(読んだ後) |
|---|---|---|
| 研究テーマの決め方 | 「なんとなく面白そう」で決めてしまう | FINER基準で論理的に評価して決められる |
| 指導教員からの評価 | 「広すぎる」「弱い」と言われがち | 根拠をもって説明でき、納得してもらえる |
| 実現可能性の判断 | 途中で「できない」と気づく | 最初から完遂可能なテーマを選べる |
| 新規性の考え方 | 「誰もやっていないか」だけを気にする | 既存研究との差分で新規性を説明できる |
| 倫理審査への対応 | 後回しで修正が多発 | 研究設計段階から倫理性を組み込める |
| 研究の意義説明 | 「役に立つと思う」という感覚的説明 | 学術・社会的意義を明確に言語化できる |
| 研究計画書作成 | 何度も差し戻される | 一発で通りやすい構成を作れる |
| 研究への不安 | 最後までやり切れるか不安 | 迷ったらFINERに戻れる安心感 |
FINERの基準とは?(定義)
FINERとは
良い研究テーマが満たすべき5つの評価基準の頭文字を取ったフレームワーク(※医学的研究のデザインより)
- F:Feasible(実施可能性)
- I:Interesting(科学的興味深さ)
- N:Novel(新規性)
- E:Ethical(倫理性)
- R:Relevant(必要性・意義)
研究テーマを主観ではなく、構造で評価するための思考枠組み。
F:Feasible(実施可能性)とは?
定義
研究が現実的に完遂できるかという観点。
チェックポイント
- 対象者数は確保できるか
- 自分の専門・スキルに合っているか
- 時間・費用・設備は足りるか
- データ取得は現実的か
NG例
- 「全国10万人を対象にした縦断研究」
- 「自分がアクセスできない施設のデータ前提」
I:Interesting(科学的興味深さ)とは?
定義
研究者自身・学術コミュニティが知りたいと思える問いか
チェックポイント
- 自分が最後まで向き合える問いか
- 指導教員・分野の研究者が関心を持つか
- 単なる作業になっていないか
重要ポイント
◆「社会的に重要」≠「研究者にとって面白い」
N:Novel(新規性)とは?
定義
既存研究の単なる焼き直しではないか
新規性の3パターン
- 対象の新規性(人・地域・集団)
- 方法の新規性(分析・測定)
- 視点の新規性(解釈・切り口)
よくある誤解
- 「誰もやっていない」=新規性ではない
- 既存研究との差分を言語化できるかが重要
E:Ethical(倫理性)とは?
定義
研究倫理・倫理審査委員会の承認を得られるか
チェックポイント
- 被験者へのリスクは最小化されているか
- インフォームド・コンセントは適切か
- 個人情報・データ管理は安全か
実務的ポイント
◆ 倫理性は「後から考える」ものではない
◆ 研究テーマ設計段階から組み込む
R:Relevant(必要性・意義)とは?
定義
研究成果が学術・社会・臨床に意味を持つか
チェックポイント
- 学問分野の発展に貢献するか
- 現場・社会課題の解決につながるか
- 将来研究の土台になるか
指導教員が最も重視しやすい要素
- 「それで、何が分かるの?」
- 「それは誰の役に立つの?」
FINERを使った研究テーマのチェックリスト
- F:最後までやり切れるか?
- I:自分は本当に知りたいか?
- N:既存研究との差分は明確か?
- E:倫理審査を通過できるか?
- R:なぜ今、それをやる意味があるか?
FINERで「良いテーマ」と「悪いテーマ」を比較
悪い例
- 広すぎる
- 抽象的
- 実現手段が不明
良い例
- 対象・条件・方法が具体
- FINER各要素を説明できる
- 研究計画書に落とし込める
FINERを研究計画書に落とす方法
- 研究背景 → R
- 研究目的 → I / N
- 研究方法 → F
- 倫理的配慮 → E
- 期待される成果 → R
◆ FINERはテーマ決めだけでなく、構成そのものを支配する
よくある質問(FAQ)
Q1. FINERはどんな場面で使うの?
A. FINERは、研究テーマやリサーチクエスチョン(RQ)を評価・設計するためのフレームワークです。テーマ選びだけでなく、研究計画書やプロポーザル作成時にも使えます。特に初学者でも網羅的に評価できる基準として推奨されています
Q2. 5つ全部満たさないとダメ?
A. 厳密には すべて満たすのが理想ですが、研究領域や段階によっては「新規性は弱いが社会的重要性が強い」などバランスでカバーすることもあります。ただし、「倫理性」の欠如は致命的なので必ずクリアすべきです
Q3. FINERはどの分野でも使える?
A. 医学・公衆衛生での適用例が多いですが、社会科学・教育・自然科学でも有効とされています。もともとは臨床研究で広く引用される基準ですが、研究デザイン一般の評価ツールとして使われています
Q4. FINERとPICOはどう違うの?
A. PICOはリサーチクエスチョンの構造化(Population, Intervention, Comparison, Outcome)向け、FINERはテーマの評価基準です。PICOで質問を整理し、FINERでその質問が良いかを評価する、といった併用が効果的です
PICOについては下記記事も記載しているため参考にしてください。
Q5. 実施可能性(Feasible)の判断基準は?
A.
- 対象者やデータが確保できる
- 時間・費用・設備が足りる
- 自分のスキルと研究方法に合っている
…といった現実的な遂行可能性を評価します。これを満たさないテーマは最後まで完成しない可能性があります
Q6. 新規性(Novel)は必ず「世界初」でなくていい?
A. はい。必ずしも世界初である必要はありません。既存研究との差分や方法論の工夫、新しい集団や条件での検証などでも新規性になります
Q7. Relevant(必要性・意義)はどう評価する?
A. はい。必ずしも世界初である必要はありません。既存研究との差分や方法論の工夫、新しい集団や条件での検証などでも新規性になります
Q8. FINERはどこで提唱された基準?
A. FINERは、医学研究デザインの教科書『Designing Clinical Research』等で紹介されている評価基準で、「良い研究の必要条件」として広く言及されています
Q9. FINER以外に似たフレームワークはある?
A. FINERを拡張した FIRM²NESS / FINERMAPS など、評価項目に測定性、管理性、出版可能性などを加えるバリエーションもありますが、まずはFINERを基本にするのが標準的です
まとめ:FINERは「研究テーマの思考OS」
- 良い研究テーマは才能ではなく設計
- FINERは「研究が迷子にならないための地図」
- テーマに悩んだら、必ずFINERに戻る
参考書籍
臨床家のための研究のすすめ
Back to the basics: guidance for formulating good research questions



コメント