はじめに
昆明・モントリオール生物多様性枠組(英: Kunming-Montreal Global Biodiversity Framework、略称: GBF)という言葉を聞いたことはあるでしょうか。「なんとなく環境の話っぽいけど、自分には関係ない」そう感じている方も多いかもしれません。しかし実はこの枠組みは、企業活動や地域ビジネスに大きく関わる世界共通ルールです。
この記事では、以下をわかりやすく解説します。
・そもそも何か
・なぜ重要なのか
・企業は何をすべきか
昆明・モントリオール生物多様性枠組とは?
超簡単に言うと、2030年までに自然を回復させるための世界の約束です。2022年にカナダ・モントリオールで開催された生物多様性条約の会議(COP15)で採択されました。
用語解説
採択とは?
[名](スル)いくつかあるものの中から選んで取り上げること。
出典 小学館デジタル大辞泉について
人類が取るべき行動の選択肢の中から、189か国9472人の代表者が集まり今後の方針を決めその中から選んで取り上げました。
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昆明・モントリオール生物多様性枠組パンフレット
https://www.env.go.jp/content/000296180.pdf

上記PDFイメージ
読み方は?由来は?
「昆明・モントリオール」は「こんめい・モントリオール」と読みます。2022年に採択された国際的な生物多様性の目標であり、略称は「GBF(Global Biodiversity Framework)」です。昆明(中国)とモントリオール(カナダ)で開催地を指します。
会議の参加者は?
開催期間:2022年12月7日-12月19日
開催場所:カナダ・モントリオール
参加国(人数):153か国9,472人(2022年12月19日時点)
153の締約国・地域の他、関連機関、市民団体等から約16,000人が事前登録し、9,472名が参加、我が国政府からは、外務省、文部科学省、厚生労働省、農林水産省、経済産業省、国土交通省、環境省及び金融庁から成る代表団が出席しています。
我が国からは、西村環境大臣が日本政府代表として閣僚級会合に出席したほか、外務省、環境省、経済産業省、厚生労働省、農林水産省、文部科学省、国土交通省、金融庁、水産庁の関係者が参加しました。西村環境大臣は、日本国代表として、閣僚級会合でのステートメントや3つのサイドイベントでのスピーチ等を通じて、生物多様性日本基金第二期の開始、7億円規模のSATOYAMAイニシアティブに関するプロジェクト(COMDEKS)への支援、2023-2025年における1,170億円の途上国支援などを公表し、我が国の取組や立場について発信しました。また、交渉を進展させるため、15の閣僚や国際機関、NGOと会談を行い、主要議題に関する意見交換等を積極的に行いました。交渉の結果、COP15においては、新たな生物多様性に関する世界目標(ポスト2020生物多様性枠組)である「昆明・モントリオール生物多様性枠組」が採択されました。また、CP-MOP10及びNP-MOP4では、新枠組の実施状況をモニタリングするための国別報告書の報告様式に関する決定が採択されました。
引用:生物多様性条約第15回締約国会議第二部、カルタヘナ議定書第10回締約国会合第二部及び名古屋議定書第4回締約国会合第二部の結果概要について
参考:当時の環境大臣西村あきひろさん氏のサイトはこちら。岸田首相から指名されていました。
https://www.a-nishimura.jp/
要は、国の環境方針を考えるTOPが集まる会合であり、そこで決められた枠組みが昆明・モントリオール生物多様性枠です。
なぜ作られたのか?
理由はシンプルです。自然が急速に失われているからです。
・森林の減少
・生き物の絶滅
・海の環境悪化
このままでは人間の生活や経済も成り立たなくなるため、世界共通の目標が必要になりました。
「この地球の自然資源は限りがある or この地球の自然資源には限りがない」
このどちらかのスタンスによって重要性は変わります。この問いに対して「限りがあると感じる方」にとっては昆明・モントリオール生物多様性枠組は、重要な枠組みであることを理解いただければと思います。
なぜ重要なのか?
この枠組みが重要な理由は3つあります。
① 自然=経済の土台だから
食料、水、資源など、すべてのビジネスは自然の恩恵依存しています。
その資源が生まれる環境がどんどん世界から失われつつあります。
② 気候変動とセットで考える必要がある
CO2だけではなく、自然そのものを守ることが求められているのが特徴です。
③ 企業評価に直結する
近年はESG投資の影響で、
・環境配慮している企業か
・自然に配慮しているかが投資判断に含まれるようになっています。
私自身も感じ始めていますが、資本主義の仕組みに対して「これで本当に良いのか?」と疑問を持つ人が増えてきているのではないでしょうか。
数字は非常に便利な指標であり、たとえば同じ「1億円の売上」であれば、異なる企業同士でも同列に比較することが可能です。しかし、その裏にあるプロセスまでは評価されません。
たとえば、
・自然資源を乱獲して生み出した1億円
・自然に配慮し、資源を有効活用して生み出した1億円
このように、プロセスを無視して結果のみを評価する構造では、成長に対する歯止めが効かなくなります。さらに、「今期よりも来期はさらに売上を伸ばす」というインセンティブが働き続けることで、無理な成長を志向する企業行動が生まれやすくなります。
長期的な地球の持続可能性という観点では、後者の方が明らかに優れています。しかし、決算や数値上ではその違いは削ぎ落とされ、どちらも同じ「1億円」として扱われてしまいます。
これは自然環境に限らず、人的資源にも同様に当てはまります。
・労働基準法を無視し、社員の満足度が低い状態で生み出した1億円
・法令を遵守し、社員の満足度が高い状態で生み出した1億円
この2つは、本来まったく異なる価値を持つはずです。
しかし現状の資本市場では、「どれだけ利益剰余金を積み上げ、株主に配当できるか」といった指標が重視される傾向があります。その結果、プロセスの質が軽視され、短期的な成果のみが評価されやすくなっています。
本来は、同じ結果であっても「どのようなプロセスで生み出されたのか」を考える必要があります。それを無視し続ければ、最終的には自分たちの首を絞めることになります。現世代にとっては問題がなくとも、これから生まれてくる世代には負の遺産を残すことになりかねません。
なお、「企業評価に直結する」という点は重要な要素ではありますが、それが本質ではありません。「評価されるから取り組む」のではなく、人間や生態系の持続性を維持するために必要な行為である、という認識が前提にあるべきです。
一方で、現実的な社内説得の場面においては、「評価につながる」という観点を補助的な材料として活用することは有効です。あくまで手段として用いつつ、本質的な目的を見失わないことが重要です。
2030年目標の全体像
この枠組みのキーワードは「ネイチャーポジティブ」つまり自然を減らすのではなく回復させることです。そのために、世界は2030年までの目標を設定しました。
重要ポイント①:30by30とは?
もっとも有名なのが30by30(サーティ・バイ・サーティ)です。
内容
2030年までに国土・海の30%を保全する
日本の動き
日本でも
・国立公園の拡大
・民間の保全活動
などが進められています。
ここで重要なのが自然共生サイト。企業や地域が保全活動を行うことで認定される仕組みです。
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重要ポイント②:企業への影響
ここが最も重要です。この枠組みは企業に対して自然との関係を説明しなさいと求めています。
具体的には?
・原材料はどこから来ているか
・自然にどんな影響を与えているか
・どう改善するか
TNFDとの関係
TNFD(自然関連財務情報開示タスクフォース)という枠組みと連動し、企業は自然リスクの開示が求められています。

横文字ばかりでわかりづらいですが、民間企業がTNFDの枠組みに沿って自然関連財務情報を開示し、評価されることを通じて、生物多様性保全に積極的な取組を行っている企業に資金が流れていく仕組みを構築することが重要という考えです。
抽象的でわかりにくい場合は、具体的な企業の事例を確認しましょう。
下記はLIONさんのTNFD取り組み事例です
↓↓
TNFD提言に基づく情報開示
ライオングループは生物多様性方針に基づき、TNFD提言のフレームワークに則り、当社グループの自然への依存、影響、自然関連のリスク、機会を分析しました。その結果をまとめた自然関連財務情報を開示します
https://www.lion.co.jp/ja/sustainability/environment/tnfd/
SDGSから始まってこのような横文字に対して違和感を持つのは、「知らない」ことに起因します。
そして、考えるのが「めんどくさい」、考える時間が「ない」結局、「偽善、利権、意識高い。」というありきたりの鋭い言葉で、自分の生活やビジネスを正当化しがちです。利権は利権でも、少しでも地球の持続性に貢献する利権に加担しましょう。
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具体的に何をすればいい?
では、何から始めればいいのでしょうか。
企業の場合
・自然への影響を把握する
・サプライチェーンを見直す
・保全活動に参加する
地域・自治体
・自然共生サイトの認定
・観光と保全の両立
個人
・地域の自然活動に参加
・消費行動を見直す
メリット・デメリット
メリット
・ブランド価値の向上
・投資評価の向上
・長期的なリスク回避
デメリット
・コストがかかる
・短期的な成果が見えにくい
重要な考え方
ここで間違えてはいけないのは売上で評価しないことです。自然保全は複雑な要因が絡むため、直接売上と結びつきません。その代わりに重要なのが
関係性の評価だと感じます。
・地域との関係
・顧客との信頼
・社会とのつながり
こうした中間指標で評価する必要があります。
問題:なぜ「データが取れない問題」が起きるのか?
多くの企業はここでつまずきます。理由はシンプルで、
- 何を測るべきか決まっていない
- サプライチェーンが見えていない
- データ収集の設計がされていない
つまり「データの前に設計がない」状態です。
正しい進め方
行動→システム→データという流れとステップを理解しましょう。
① 行動を分解する(最重要)
まずやるべきはステークホルダーの行動を書き出すことです。
例(シンプルに):
- 仕入先:原材料を採取する
- 自社:加工・製造する
- 物流:輸送する
- 顧客:使用・廃棄する
ポイント
「環境負荷」はこの行動の結果として発生します。
② 環境負荷ポイントを特定する
次に、どこで負荷が発生しているかを仮説でいいので決める
例:
- 原材料採取 → 森林破壊
- 製造 → CO2排出
- 輸送 → 燃料消費
ポイント
完璧でなくて良いです。まずは「ここ怪しいよね」で十分です
③ 最低限のデータを決める
ここで初めてデータです。重要なのはまずは「今取れるデータ」に絞ること
例:
- 電力使用量
- 燃料使用量
- 仕入量
- 廃棄量
ポイント
NGパターン:最初から「生物多様性指数」などを取ろうとする
④ 収集方法を決める
データ収集は4つの方法に分解
既存データを使う
まずは社内にあるものからはじめましょう。
- 会計データ(仕入・電気代)
- 物流データ
- 生産データなど
推計する
実はこれが一番使われます。
例:
- 電力使用量 × 排出係数
- 輸送距離 × CO2係数
ポイント
完璧な実測は不要
「推計で意思決定できる状態」が重要
新規データを集める
関わる取引先へのアンケート等
環境配慮の有無、原材料の産地・調達方法など
ポイント
アンケート形式でOK(最初はざっくりでいい)
手段:IoT・センサー
自社で取れるものとしてセンサー利用が挙げられます。例えば、
- 工場のリアルタイム測定
- GPS物流データなど
ポイント
・余剰がある企業でない限り、新たな投資は難しいと思います。まずは、目先の小さな部分から可視化を始めていくことです。
⑤可視化する
ここでようやく可視化です。可視化は他社へのコミュニケーション手段の一つです。。
おすすめは:
- Excel / スプレッドシート
- BIツール(Looker / Tableau)
見るべきは
- どこで負荷が大きいか
- 改善余地があるか
外部関係者にわかりやすく伝えるために可視化をしましょう。
可視化ツールのおすすめは?Tableau(タブロー)です。
BIツールTableauのデスクトップ版が現在無料公開されました。これまで年間10万円かかる利用料が無料になりました。組織で本格利用するには、もちろんある程度の金額が発生しますが担当者レベルが作業をして資料を作成するための図の加工にはお金を要しません。
https://www.tableau.com/ja-jp/products/desktop
よくある失敗パターン
① 完璧主義
→ データが揃うまで動かない
→ 一生始まらない
② ツールから入る
→ システム導入して終わる
③ KPIが売上
→ 環境は測れない
成功のコツ(重要)
ポイントは1つです。「粗くてもいいから回す」
正しい順番
- 行動を定義
- 仮説で負荷を置く
- 取れるデータで測る
- 改善する
よくある誤解
Q. SDGsと同じ?
違います。より具体的で実行フェーズのルールです。
Q. 大企業だけの話?
いいえ。サプライチェーンを通じて中小企業にも影響します。
Q. やらないとどうなる?
一部の投資・取引から外されるリスクがあります。
そもそも人間は、自然環境やサプライチェーンに依存して生活しています。そのため、環境変化の影響は間接的に私たちの生活にも及びます。近年は、気候変動や農業従事者の減少など、複合的な要因によって、食料の生産が不安定になるリスクが高まっています。これにより、一部の農産物では供給量が減少する可能性があります。一方で、日本では人口減少が進んでいるものの、世界全体では人口増加や新興国の経済成長により、食料需要の構造が変化しています。特に、肉や穀物など特定の資源に対する需要は増加傾向にあります。このように、供給の不安定化と需要構造の変化が重なることで、特定の資源において需給が逼迫し、結果として価格上昇の圧力が高まる可能性があります。
日本茶などはいい例です。
例:日本茶
農水省がまとめた2025年の茶の栽培面積は3万3400ヘクタールで、前年から5%(1700ヘクタール)減った。最大産地の静岡県を中心に、農家の高齢化や労力不足を理由にした廃園が相次いだ。抹茶の原料となる碾茶(てんちゃ)が高価格で取引されていることを受け、一部の地域では耕作放棄地などを利用した碾茶の栽培が増えた。
栽培面積は1956年の統計開始以降の最低を更新。長期的に減少傾向が続いている。
https://news.yahoo.co.jp/articles/872e49242f3e837eb2333cec07ddaaf21c7328c0
まとめ
昆明・モントリオール生物多様性枠組は自然とどう向き合うかという世界のルール変更です。
これからは
・自然(資源)を守る企業が選ばれる
・自然(資源)と共存する地域が価値を持つ
企業を評価していくべき時代になります。そして本質は1人1人が自然との関係性をどう築くかここにあります。
最後に
もしあなたが
・自然に関わる事業をしている
・地域資源を活かしたい
・企業としての価値を高めたい
のであれば、この枠組みは大きなチャンスにもなります。自分の勤めている企業に違和感があるのであればその違和感を大切に、調べ行動を考えていきましょう。
自然活動団体の皆様向けご相談サービスです
今やっている自然支援活動がどのくらい効果がでているか?検証できていますでしょうか。観省庵はネイチャーマーケティングを支援する活動をしています。自然コンテンツを使った顧客との関係性を一緒に考えていきませんか?情報を発信しているけど、どのように活用されているかわからない・・そういったお悩みがありましたらお気軽にご相談ください。一緒に頭を使って考えさせてください。




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