持続可能性は、想いではなく仕組みから生まれるのか
社会を良くしたい。自然を守りたい。子どもたちを支えたい。
そんな想いから始まった活動は数多くあります。しかし、どれほど素晴らしい想いがあっても、活動が長く続かなければ社会は変わりません。今日目に留まったニュースは、一見すると異なるテーマを扱っていました。NPOへの助成制度、公益信託、自然保全のための金融商品。しかし共通していたのは、「良い活動を支える仕組み」の話だったように思います。
NPOを支える見えない土台
パナソニック ホールディングスは、「Panasonic NPO/NGOサポートファンド for SDGs」の助成先を決定しました。
パナソニックは、NPO/NGOが戦略的に社会課題の解決をはかるためには、その組織基盤強化が重要との認識のもと、2001年に「Panasonic NPOサポートファンド」を設立しました。2018年度からは助成プログラムを「Panasonic NPO/NGOサポートファンド for SDGs」に改訂し、このたびの助成先を含め506団体、6億6,851万円を助成しています。
興味深いのは、この助成が個別事業ではなく「組織基盤の強化」を支援している点です。社会課題の解決に目が向くと、どうしても成果や活動内容ばかりが注目されます。しかし、実際に活動を支えているのは、
・人材育成
・資金調達
・ガバナンス
・情報発信
といった見えにくい土台です。木が大きく育つために根を張るように、組織もまた土台への投資が必要なのかもしれません。
想いを未来へ託す仕組み
全国こども食堂支援センター・むすびえは、新公益信託制度のもとで認可第1号となる公益信託の認可を取得しました。
「公益信託制度」とは、契約・遺言により委託者から受託者(担い手)に託された財産を用いて、受託者が「委託者の想い」に沿った公益活動を継続的に行う仕組みです。100年以上前に作られた公益信託法が2024年に改正され、2026年4月から新しい公益信託制度がいよいよスタートしました。従来では、受託者は信託銀行や信託会社に限定されていましたが、今回の改正でNPO法人や公益法人、また法人に限らず個人も受託者になることが可能となりました。
寄付は善意によって生まれます。しかし善意だけでは継続しません。公益信託が目指しているのは、お金を集めることではなく、寄付者の想いを未来へ引き継ぐことです。活動は人が始めます。けれど、その人がいなくなった後も続くためには仕組みが必要です。持続可能性とは、活動の継続だけでなく、想いの継承なのかもしれません。
自然を守るための新しい金融
Ecobankは、世界初となる自然債(Nature Bond)を発行しました。
6月2日、Ecobank Groupはロンドン証券取引所で、国際資本市場協会(ICMA)の枠組みに基づく商業銀行発行として世界初の自然債を発行した。発行額は4億5,000万米ドル、約705億円で、アフリカの生物多様性保全に向け、国際資本とアフリカ資本を動員する新たな資金調達手段となる。Moody’sは同債券に最高位のサステナビリティ品質スコア「SQS1 Excellent」を付与した。
調達した資金はアフリカの生態系保全に活用される予定です。従来、自然保全は寄付や公的資金によって支えられることが一般的でした。しかし近年は、金融の仕組みそのものを活用して自然を守ろうという動きが広がっています。自然を守ることを「コスト」ではなく「投資」と捉える試みです。もちろん、自然の価値をお金だけで測ることはできません。それでも、自然保全を長く続けるためには、想いだけではなく経済との接点を設計する必要があるのでしょう。
今日の省察
私たちは成果を見ています。しかし成果は下流に現れるものです。その上流には活動があります。活動のさらに上流には仕組みがあります。そして仕組みのさらに上流には価値観があります。観省庵の流域思考で考えるなら、価値観が仕組みを生み、仕組みが活動を支え、活動が成果を生み出します。私たちはしばしば成果や活動に目を向けます。しかし、本当に大切なのは、その活動を支えている見えない土台なのかもしれません。
明日への問い
あなたが大切にしている活動は、想いだけで続くでしょうか。それとも、その想いを支える仕組みがあるでしょうか。また、自分自身の人生や仕事において、今育てるべき「見えない土台」とは何でしょうか。
参考文献
NPO・NGOの組織基盤強化
Panasonic NPO/NGOサポートファンド for SDGs 2026年助成先決定
https://news.panasonic.com/jp/topics/206529
公益信託制度
令和8年4月1日開始の「新公益信託制度」後の認可第1号を取得認定。全国こども食堂支援センター・むすびえが、NPO法人初の公益信託受託者として認可を取得
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000142.000044382.html
自然債(Nature Bond)
Ecobank、世界初の自然債を発行 アフリカの生態系保全へ資金動員
https://esgjournaljapan.com/world-news/53693
