農業の価値を、収穫量だけで測る時代は終わりつつある
農業の成果というと、
- 収穫量
- 品質
- 売上
が注目されます。もちろん、それらは農業を続けるために欠かせない指標です。しかし2026年6月、国際自然保護連合(IUCN)は、新たな評価レポートを公表しました。
そのテーマは、
「農業は、食料を生産するだけでなく、生物多様性を回復させる力も持っている」
というものです。
1. 農業は「自然を利用する営み」から「自然を育てる営み」へ
IUCNは、世界で利用されている11種類の農業認証制度を比較し、それぞれが生物多様性の保全にどの程度貢献しているかを分析しました。
その結果、認証制度によって違いはあるものの、
農業の現場で
- 土壌を守る
- 水環境を守る
- 送粉昆虫を守る
- 生息地を残す
といった取り組みを進めることは、ネイチャーポジティブ(自然再生)につながる可能性があると評価されています。
2. 良い畑は、人だけでなく生きものも育てる
果樹園や畑では、私たちは果実を収穫します。しかし、
同じ場所で
- 蜂は花粉を運び、
- ミミズは土を耕し、
- 微生物は有機物を分解し、
- 鳥は昆虫を捕食しています。
つまり、一つの農地には、人だけではなく、多くの命が暮らしています。収穫量だけでは見えない価値も、そこには存在しているのです。
3. 「自然を守る農業」は特別なものではない
IUCNのレポートで印象的なのは、自然保護を「農業とは別の活動」として考えていないことです。
例えば、
- 花が咲く場所を残す
- 土を裸地にしない
- 農薬を必要最小限に抑える
- 水辺を保全する
こうした日々の管理そのものが、生物多様性を支える行動になります。自然保護とは、新しいことを始めるだけではありません。普段の仕事を、少しだけ自然に寄り添う形へ変えていくことでもあります。
観省庵の視点
果樹園は、果物を育てる場所であると同時に、土や虫、鳥たちが命をつなぐ場所でもあります。良い農業とは、人においしい実りを届けることだけではなく、そこに暮らすすべての命にとって、豊かな環境を育てることなのかもしれません。
今日の省察
私たちは、成果を数字で測ることに慣れています。しかし自然は、数字だけでは測れません。鳥のさえずり。花に集まる蜂。土のやわらかさ。そんな小さな変化も、豊かな農地の成果なのだと思います。
明日への問い
私が育てているのは、作物だけだろうか。それとも、その土地に暮らす命全体を育てているだろうか。
参考文献
- International Union for Conservation of Nature (IUCN)
Voluntary agricultural standards can support nature positive outcomes - International Union for Conservation of Nature (IUCN)
IUCN Programme 2026–2029
