コンサルタントの道具箱

「うちには特に問題はない」と思っている会社に、コンサルタントは何ができるのか

2026.08.17
「うちには特に問題はない」と思っている会社に、コンサルタントは何ができるのか

この記事はこんな人におすすめ

  • 「特に困っていない」と言われ、提案が進まないコンサルタント
  • クライアントの問題意識をどう引き出すか悩んでいる人
  • データを提示しても、なかなか行動につながらない経験がある人
  • 顧客自身も気づいていない課題を発見したい人
  • 「課題解決」より前のコンサルティングについて考えたい人

記事の概要

コンサルタントは「問題を解決する仕事」と説明されることがあります。しかし、実務ではその一歩手前で止まることがあります。クライアントが、「うちには、特に問題はありません」と思っているケースです。

売上は大きく落ちていない。クレームもそれほどない。社員も辞めていない。Webサイトも動いている。広告から問い合わせも来ている。確かに、明らかな問題はありません。しかし、「問題が起きていないこと」と「より良い状態であること」は同じではありません。ここに、コンサルティングの難しさがあります。

この記事を読むと変わること

Before

問題がある

原因を分析する

解決策を提案する

実行する

After

現状を観察する

「本当にこれでいいのか?」を考える

理想の状態を描く

現状との違いを発見する

問題を定義する

解決策を考える

実行する

つまり、問題解決の前には「問題発見」があるということです。

「自社には問題がない」とは?

たとえば、ある企業にWebマーケティングについて尋ねたとします。

「集客で困っていることはありますか?」

すると、「特にないですね」という回答が返ってくる。

しかし詳しく聞いてみると、広告費は毎年増えている。問い合わせ数は横ばい。問い合わせ後の商談化率は把握していない。既存顧客がなぜ継続しているのかも分からない。競合との違いを聞いても、明確には答えられない。

それでも、「特に問題はない」という認識です。これは、相手が間違っているとは限りません。その人から見えている世界では、本当に問題がないのです。

問題は「存在するもの」なのか?

ここで、一度「問題」という言葉を考えてみます。問題とは、どこかに転がっていて、見つければ拾えるものなのでしょうか。必ずしもそうではありません。

たとえば、

売上1億円。営業利益1,000万円。前年比105%。これだけを見れば、大きな問題はないように見えます。

しかし、「3年後に売上2億円を目指す」という目標を置いた瞬間、同じ数字の意味が変わります。

前年比105%では足りない。新規顧客の獲得方法を変える必要がある。営業体制も見直す必要がある。商品構成も変える必要があるかもしれない。

つまり、問題は「現状」だけから生まれるわけではありません。「ありたい状態」と「現在地」を比較したとき、その間に問題が立ち上がります。

「問題がない」のではなく、「差分が見えていない」

問題を非常にシンプルに表現すると、

問題 = ありたい状態 − 現在の状態

と考えることができます。

ところが、

「ありたい状態」が定義されていなければ、この計算はできません。

現在地しか見ていなければ、「まあ、こんなものだろう」となります。これは企業だけではありません。健康診断を受けなければ、自分の身体の変化に気づきにくい。他社を知らなければ、自社の生産性が低いことにも気づきにくい。顧客に聞かなければ、自社の商品に対する不満も見えません。

問題がないのではなく、比較する対象がないため、差分が見えていない可能性があります。

なぜ企業は自社の問題に気づきにくいのか

① 毎日見ているから

人間は環境に適応します。少しずつ変化するものほど、気づきにくいものです。問い合わせが毎年5%ずつ減っていても、日々の業務では大きな変化に感じないかもしれません。

業務が少し非効率でも、「昔からこうやっている」ことで違和感がなくなります。慣れは、問題を風景に変えてしまいます。

② 比較対象がないから

自社しか知らなければ、自社の状態が普通になります。CVRが1%。問い合わせ対応に3日。商談化率20%。顧客継続率60%。数字だけでは、良いのか悪いのか判断できません。過去。競合。業界。顧客期待。目標。比較対象があって初めて、現在地の意味が分かります。

③ 数字になっていないから

問題は、必ずしも大きな事件として現れるわけではありません。営業担当者が毎日10分余計な作業をしている。Webサイトで毎月100人が途中離脱している。常連客が少しずつ減っている。採用した人が半年以内に辞めている。一つひとつは小さな出来事です。しかし年間で積み上げると、大きな損失になります。見えていないものは、問題として認識されにくい。だからこそ、計測する意味があります。

④ 「困っていない」と「満足している」を混同しているから

ここは重要な違いです。「困っていますか?」と聞けば、

「困っていません」と答える人は多いでしょう。

しかし、

「今の状態が理想ですか?」

と聞けば、答えが変わることがあります。

困っていない。でも、もっと良くしたい。この状態は普通に存在します。

つまり、課題発見では「困りごと」だけを聞いてはいけないということです。

コンサルタントがやってはいけないこと

ここで、「御社にはこんな問題があります」といきなり指摘するとどうなるでしょう。相手からすると、「いや、別に困ってないけど」となります。

さらに、

「競合より遅れています」「このままでは危険です」「DXしないと取り残されます」

と不安を煽る。

短期的にはサービスが売れるかもしれません。しかし、それは本当に良いコンサルティングでしょうか。私は違うと思います。問題をつくって売るのではなく、一緒に問題を発見する。ここには大きな違いがあります。

問題を「教える」のではなく、観察できる状態をつくる

では、どうするのか。まず現在地を一緒に観察します。

売上。顧客数。問い合わせ。CVR。商談化率。継続率。顧客の声。競合。業務時間。

そして問いかけます。

「これは想定通りでしょうか?」
「3年前と比べてどうでしょう?」
「お客さんはどう感じているでしょう?」
「もし制約がなければ、どういう状態にしたいですか?」

コンサルタントが答えを与えるのではありません。クライアント自身が、自分たちの状態を観察できる環境をつくる。そこから問題認識が始まります。

データの役割は「説得」ではなく「観察」にある

コンサルティングでは、「データを使ってクライアントを説得する」

と言われることがあります。

しかし私は、少し違う捉え方をしています。

データは、

相手を説得するための武器ではなく、一緒に現実を見るための窓

なのではないでしょうか。

たとえば、「SEOを強化すべきです」と主張する必要はありません。

検索データを一緒に見る。競合を見る。顧客が検索している言葉を見る。問い合わせにつながったページを見る。するとクライアント自身が、「このテーマ、うちは全然情報を出していませんね」と言うかもしれません。この瞬間が重要です。コンサルタントが問題を指摘したのではありません。観察によって、クライアント自身が問題を発見した。

人は「自分で見つけた問題」なら動きやすい

外から、「あなたの会社には問題があります」

と言われれば、人は身構えます。

しかし、

自分で数字を見る。
自分で顧客の声を聞く。
自分で競合を見る。
自分で違和感を持つ。

そして、

「これは変えた方がいいかもしれない」

と思う。

ここまで来ると、行動の意味が変わります。

やらされる改善ではなく、自分たちが必要だと思った改善

になるからです。

コンサルタントは「問題解決者」の前に「観察支援者」である

一般的には、

問題

分析

解決

がコンサルティングだと考えられています。

しかし、その前にもっと重要な仕事があります。

観察

違和感

問い

問題認識

問題定義

分析

解決

実践

再び観察

です。

問題を解決するだけなら、優秀なAIにもかなりできるようになるでしょう。

しかし、

「そもそも何を問題として扱うのか」

は、簡単ではありません。


「問題がない会社」には、問題解決を売らなくていい

クライアントが、

「うちには特に問題はない」

と言ったとします。

そこで無理に問題を探してはいけません。

まず、

「では、どんな会社になったらもっと良いと思いますか?」

と考えてみる。

そして、

現在地を観察する。

顧客を見る。

社員を見る。

数字を見る。

市場を見る。

未来を見る。

そのうえで本当に問題がなければ、それでいい。

しかし、観察することで、

「ここは変えたい」

というものが見つかるかもしれません。

コンサルタントの仕事は、問題をつくることではありません。

ましてや、不安をつくって商品を売ることでもありません。

クライアントが、自分たちの現在地と未来を、自分たちの目で見られるようにすること。

その結果として、

「ここを変えたい」

という意思が生まれる。

そこから初めて、問題解決が始まります。

問題解決より前に、問題認識がある

良いコンサルタントとは、問題をたくさん見つける人ではないのかもしれません。クライアントと一緒に現実を観察し、

「今、何が起きているのか」
「私たちは、どこへ行きたいのか」
「その間には、どんな差があるのか」

を考えられる人。問題を押しつけるのではなく、問題が見える状態をつくる人。私はそこに、これからのコンサルティングの重要な役割があると思っています。

小さな会社でもできることから始める

ここまで読むと、「問題を観察するには、大がかりな調査や高価な分析ツールが必要なのでは」と感じるかもしれません。しかし、必ずしもそうではありません。

むしろ小さな会社ほど、まずは無料で使える道具を使って「自社で何が起きているのか」を観察できる環境をつくることから始められます。

その代表的なツールが、Google Analytics 4(GA4)です。

GA4という無料ツールは、実はものすごい

GA4は、基本的な機能を無料で利用できるアクセス解析ツールです。しかし、無料だからといって簡易的なツールではありません。

たとえば、

  • どのくらいの人がWebサイトを訪れているのか
  • どこから訪問しているのか
  • どのページが読まれているのか
  • どのページから問い合わせにつながったのか
  • ユーザーがサイト内でどのように行動しているのか
  • 施策を行った前後で数字がどう変化したのか

といったことを計測できます。考えてみれば、これはすごいことです。かつて企業が顧客行動を調査しようとすれば、アンケートやインタビュー、調査会社への依頼など、多くの時間と費用が必要でした。

もちろん、GA4だけで顧客のすべてが分かるわけではありません。それでも、自社のWebサイトで起きている顧客行動の一部を、ほぼ毎日観察できる環境を無料で持てる。これは、小さな会社にとって非常に大きな武器です。

大切なのは「GA4を入れること」ではなく、観察できる環境をつくること

ただし、GA4をWebサイトに導入すれば、それだけで経営が良くなるわけではありません。

重要なのは、「自社が知りたいことを、きちんと観察できる環境になっているか」です。

たとえば問い合わせを増やしたい会社なら、

「問い合わせが何件あったか」

だけでは十分ではありません。

どこから来た人なのか。
どのページを読んだのか。
どんな検索から訪れたのか。
どのページから問い合わせに進んだのか。

施策の前後で何が変わったのか。こうした情報を継続的に確認できるようにしておけば、感覚だけでは見えなかったものが少しずつ見えてきます。

だからこそ、ツールそのものより「環境構築」が重要です。

GA4やGoogle Search Console、Googleタグマネージャーなどを適切に組み合わせ、必要に応じてLooker Studioなどで可視化する。

そして、

観察 → 気づき → 仮説 → 実践 → 結果 → 再び観察

という循環を回せるようにする。

一度この環境を整えてしまえば、一つの施策を評価するだけでなく、その後のマーケティング活動にも継続的に使える「観察の基盤」になります。

小さな会社だからこそ、観察から始める

大企業のような大規模なマーケティングシステムを、最初から導入する必要はありません。月に数十万円の分析ツールを契約する必要もありません。

まずは、「自分たちのお客さんが、どこから来て、何を見て、どんな行動をしているのか」

を知るところから始めてみる。無料のツールでも、環境をきちんと整えれば、見える世界は大きく変わります。問題が見つかれば改善する。改善したら結果を見る。

うまくいかなければ、また考える。その小さな循環を積み重ねることが、マーケティングの第一歩です。

観省庵では、GA4・Googleタグマネージャー・Search Consoleなどを活用した計測環境の構築から、データの可視化、分析、改善まで支援しています。

「そもそもGA4が正しく設定されているか分からない」
「数字は取れているけれど、何を見ればいいか分からない」
「専門のマーケティング担当者はいないけれど、自社のことをもう少し知りたい」

そんな段階からでも大丈夫です。

大切なのは、高価な道具を持つことではなく、自分たちの現在地を観察できること。

まずは、できるところから始めてみませんか。

ご相談・お問い合わせは、観省庵「ご依頼・お問い合わせ」からご連絡ください。

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自然は、一つの組織だけでは守れない 観省庵 Daily Insight For NGO/NPO 2026年6月30日
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