この記事はこんな人におすすめ
- 「論理的に考える力」を身につけたい学生・社会人
- 批判的思考(クリティカルシンキング)を実践的に学びたい人
- 会議や教育現場で“深い問い”を立てられるようになりたい指導者
- 哲学対話・P4C(Philosophy for Children)・ファシリテーションに関心がある方
記事の概要
「WRAITEC(ライテック)」とは、
ハワイ大学教育学部のトーマス・E・ジャクソン(Thomas E. Jackson)博士が開発した、
“Good Thinker’s Tool Kit(良い思考のための道具箱)” の中核をなす7つの思考ツールの総称です。
このフレームワークは、
子どもから大人までが「自分の頭で考え、他者と対話し、よりよく判断する」ための知的な問いの技法として、世界中の教育現場や企業研修でも活用されています。
WRAITECとは?(定義と7つの構成要素)
WRAITECとは、次の7つの英単語の頭文字をとった思考のプロセスです。
一つひとつが「良い考え方のための問い」を示しています。
| 項目 | 英語 | 意味・問いの方向 | 目的 |
|---|---|---|---|
| W | What do you mean by … ? | 「それはどういう意味ですか?」 | 言葉や概念の定義を明確にする |
| R | What are the Reasons? | 「なぜそう考えるのですか?」 | 主張や意見の根拠を探る |
| A | What are we Assuming? | 「どんな前提に基づいていますか?」 | 無意識の前提・仮定を明らかにする |
| I | What Inferences are being made? | 「どんな結論を導いていますか?」 | 論理の流れと推論の妥当性を確認する |
| T | Is it True? How do we know? | 「それは本当ですか?どう知るのですか?」 | 真偽・妥当性・証拠の検証 |
| E | What Examples or Evidence can you give? | 「どんな具体例や証拠がありますか?」 | 抽象的な主張を具体化する |
| C | Can you think of a Counter-example? | 「それをくつがえす例はありますか?」 | 反例や例外を考え、思考を深める |
WRAITECの目的
WRAITECの狙いは、「思考を止めない」こと。
人は日常的に、思い込み・感情・慣習のもとで判断を下します。
WRAITECは、その自動的な反応をいったん止め、
「なぜそう考えるのか」「どの程度確かか」「他の可能性はないか」
を自分自身に問い返す構造を与えます。
これにより、以下のような力が自然と養われます。
- 論理的思考力(Logical Thinking)
- 批判的思考力(Critical Thinking)
- 創造的思考力(Creative Thinking)
- 対話的思考力(Dialogical Thinking)
WRAITECの活用場面
| 分野 | 活用例 |
|---|---|
| 教育 | 授業中の哲学対話(P4C)、ディスカッション、作文の構成指導 |
| ビジネス | 会議・コンサルティング・企画立案での論点整理 |
| 研究・分析 | 仮説検証・文献レビュー・問題発見のフレーム |
| カウンセリング | 思考の明確化・自己理解の促進 |
| 日常生活 | SNSやニュースを鵜呑みにせず、自分の判断軸を磨く訓練 |
実践例:WRAITECを使った思考の展開
例題:「SNSの情報は信頼できるか?」
- W:そもそも「信頼できる」とはどういう意味?
- R:なぜ信頼できる/できないと考えるのか?
- A:自分はどんな前提(例:フォロワー数が多い人は正しい)で判断しているか?
- I:その前提からどんな結論を導いているか?
- T:その結論は本当に正しいのか?証拠はあるか?
- E:過去に正しかった・間違っていた事例を挙げられるか?
- C:逆の例(信頼できる少数意見など)は存在しないか?
→ 結果:「情報の出所・証拠・反例を見比べる必要がある」という自分の結論に到達。
WRAITECを身につける3つのステップ
| ステップ | 内容 | コツ |
|---|---|---|
| ① 書き出す | 問題に対して7つの問いを書き出す | 頭の中ではなく紙に可視化する |
| ② 対話する | 他者とWRAITECを使って考えを交換 | 自分の前提に気づきやすくなる |
| ③ 振り返る | 結論より「問いの質」を振り返る | 問いの深さが思考の深さ |
WRAITECを使うメリット
- 「考える」ことが習慣化する
- 感情や先入観に流されにくくなる
- 会話や議論が“対立”でなく“共創”になる
- 情報の真偽を見抜くリテラシーが高まる
- 人を動かすよりも、“人を理解する”姿勢が育つ
まとめ:WRAITECとは
WRAITECとは、「良い思考を育てる7つの問い」であり、「わからないことをそのままにせず、問い続ける力」を与える思考法です。ジャクソン博士の言葉を借りれば、
“Thinking well is not about having answers, but about asking better questions.”
(良く考えるとは、答えを持つことではなく、より良い問いを持つことである。)
お問い合わせ
コーチングや振り返り、コンサルティングについてのお問い合わせは下記からお願いいたします。
参考
Toolkit
Creighton University Philosophy for ChildrenCreighton University in Omaha, Nebraska is a Jesuit college where students, ...



コメント