境界を越えなければ守れないものがある
自然は国境を知りません。渡り鳥は国境を越えて飛びます。河川は行政区をまたいで流れます。気候変動も、生物多様性の損失も、一つの国だけでは解決できません。それにもかかわらず、私たちは組織や地域、国家という枠組みの中で物事を考えがちです。今日目に留まったニュースは、それぞれ異なるテーマを扱っていました。しかし共通して見えてきたのは、「境界を越えた協力」の重要性でした。
アメリカUSAID援助縮小後の自然保護
自然保護分野では、長年アメリカ政府による支援が大きな役割を果たしてきました。しかし、その支援に変化が生じる中で、自然保護団体は新たな資金源や協力体制の構築を模索しています。
USAIDの解体と、他の米国機関による国際自然保護助成金の停止は、種や生息地だけでなく、世界中で野生生物を守る人々をも危険にさらした。公園管理官や野生生物犯罪対策官は、給与、訓練、装備のための資金を失った。アフリカ、アジア、その他の地域における野生生物密輸の根本原因に対処する取り組みは中止され、USAIDが中央アフリカのコンゴ盆地で実施していた森林保護プログラムも廃止された。これはUSAIDがこれまで実施してきた最大規模かつ最も長期にわたる事業の一つだった。大小さまざまな自然保護団体は数千万ドルもの資金を失い、一部の団体は当初期待していた資金のほんの一部で活動せざるを得なくなり、他の団体はプログラムを完全に閉鎖せざるを得なくなった。
アマゾン盆地や中央アメリカなどで長年地域主導の自然保護活動を提唱してきたデビッド・カイモウィッツ氏は、率直にこう述べている。「これは、一つの時代の自然保護の終焉を意味する。」
一つの資金源に依存するのではなく、多様な主体が支え合う仕組みが今求められています。自然保護の課題は、一国だけで解決できるものではありません。だからこそ、国境を越えた連携が重要になっています。
私がご支援させていただく中で考えているのは、寄付金の調達経路の偏りからの脱却です。
人口が減り続けて、実質GDP成長が少なくなり可処分所得が減っていく中、個人寄付は減っていきます。実際に海外でも寄付数の数は減って、金額が増えているといったデータもありました。一方国内ではセグメント別でみるとシニア層の割合は増え続けます。核家族化し、一人世帯のシニアも多く、亡くなった後のことを考えられる方も多いです。そういった方への選択肢の一つとして「遺贈」があります。ここも各団体が取り組みはじめていますが、まだまだ遺贈の認知度が低いのと、相続税の関係や処理上一筋縄ではいきません。
他はどこから調達すべきか?
最近はクラウドファンディングもあり、成果をあげている団体もありますが、これはいわば個人寄付です。自社サイト経由ではなく、クラウドファンディングサイト経由の寄付になっているだけであり、手段として異なりますが資金源は変わりません。
すると、考えられるのは、自己資本比率が高く、次の一手を探している企業でしょう。いざというためのお金を残しつつ、次のビジネスの目を探しているような会社です。そういった企業に対して、同じ志で取り組めるパートナーとしての健全な関係性を構築できるもの同士が手を取り合うことが大事です。
企業の悩みは、AI時代に必要とされる「引用力」です。認知度だけゴリ押しできた時代が終わり、信頼性の名のもとシビアに比較検討される世界です。そこに対するアンサーとして、企業と第三セクターの取り組みは引用力を支える一要素となるでしょう。
次のニュースはまさにその事例の一つです。
WWFと企業の協働
WWFとセイコーエプソンは国際的な企業提携を発表しました。
WWFとセイコーエプソン株式会社(東証:6724、「エプソン」)は本日、国際企業パートナーシップの第2段階を開始しました。両組織は今後3年間、これまでの協力関係を基盤として、「ネイチャー・ポジティブ(*1)」――2030年までに生物多様性の損失を食い止め、回復へと転換することを目指す国際目標――を支援する活動を強化していく予定です。この協力は、WWFと日本の電子機器・精密機器企業との初の国際的な企業間パートナーシップとなった。同社はまた、環境負荷の軽減と森林資源の責任ある供給の確保に向けた取り組みを開始し、WWFの民間セクターによる森林対策プログラムであるForests Forward(*2)にアジア企業として初めて参加した。
今回の提携はフェーズ1に続きフェーズ2。お金の提供ではなく、企業自身も経済活動への取り組みを宣言しています。
サプライチェーンの環境負荷を最小限に抑えることは、企業のサステナビリティへの取り組みの一環としてますます重要になっています。プリンターをはじめとする紙を使用する機器を製品に持つエプソンにとって、森林資源の責任ある利用は事業運営に直接関係し、特に気候変動や生物多様性の喪失に直面する中で、長期的な事業継続性を確保するために不可欠です。エプソンはWWFと協力し、森林破壊の防止と適切な森林管理の促進に貢献するため、森林資源の責任ある利用を強化することを約束しました。この新たな段階において、同社はアカウンタビリティ・フレームワーク・イニシアティブ(*3)の要件に沿って、トレーサビリティの向上やサプライヤーとの連携など、森林破壊のないサプライチェーンへの取り組みを正式化し、実施していく予定です。
環境問題は、NPOだけで解決できるものでも、企業だけで解決できるものでもありません。企業には技術や資金があります。NPOには専門知識や現場での知見があります。それぞれが持つ強みを持ち寄ることで、より大きな価値を生み出せる可能性があります。社会課題の解決には、立場を超えた協働が欠かせません。
AI時代に強いのは、こういった企業と第3セクターが手をとりあう関係性、ストーリー、文脈だと私は思います。資本の力や屈強な営業力でビジネスの新規開拓をしたところでストーリーを語れないと差別化が難しく継続するのは難しい時代です。
経営学者マイケルポーターが提唱した3つの戦略の1つであるコストリーダーシップ戦略は、環境負荷のもと成り立っていたと過言ではありません。企業は、グローバルサプライチェーンを構築し、安い資源に付加価値を載せて販売してきました。
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その資源は、新興国の安い人件費、広大な森林の開拓、安価な木材の輸入・・・そういったものに頼ってきました。だからこそ、圧倒的な低コストが実現できたわけです。しかし、今や個人メディアの影響力が強くなり、すぐに悪いことは広まる時代です。いわば透明性が求められる時代にもなり、正直ものが勝つ時代です。
これは綺麗なことを発信することを意味しません。
自分たちのビジネスの環境負荷への意識を自認し、公開し、修繕していくプロセスという正直です。
「自分たちのビジネスは拡大しているが、一方でXXに負荷をかけている」という共有と改善の取り組み。謙虚さが重要な時代です。
参考:カーボンフットプリントとは?環境省
https://www.env.go.jp/earth/ondanka/supply_chain/gvc/cfp_calculation.html
渡り鳥は国境を越える
BirdLife Internationalは、ヨーロッパの渡り鳥保全に関する取り組みを紹介しています。
責任の共有
多くの渡り鳥や狩猟鳥は、年間を通して数十カ国を横断して移動します。北ヨーロッパで繁殖する鳥は、地中海沿岸やアフリカで越冬することがあり、その過程で健全な生息地と持続可能な管理に依存しています。
つまり、保全活動の成功は協力にかかっているということだ。もし一部の国が個体数減少への圧力を軽減する一方で、他の国が持続不可能な慣行を続けるならば、渡りルート全体における回復努力は失敗に終わるだろう。
『Sharing the responsibility』を教えてくれるのが野鳥保護の世界です。渡り鳥は複数の国を移動します。繁殖地と越冬地のどちらか一方だけを守っても十分ではありません。空を共有している以上、責任も共有しなければならないという考え方です。これは鳥の話だけではありません。自然環境そのものが、私たちに「協力すること」の重要性を教えてくれているように感じます。鳥は本当にいろいろなことを教えてくれます。
先日、日本の研究が世界に公開されました。
東北大学大学院生命科学研究科のプレスリリース『海を越えるフクロウ類:アオバズクの渡り経路を解明 ― 世界最長の海上移動と、その先に待つ大規模プランテーション ―』
下記をご覧いただくと、いかに鳥が国境を跨いで渡っているかがわかります。
今日の省察
今日の記事を読みながら思い浮かんだのは、「流域」という言葉です。川には県境がありません。水は上流から下流へ流れ続けます。上流で起きたことは、やがて下流へ影響します。自然は本来、境界を持たない存在です。しかし人間社会は、組織や地域、国家など、さまざまな境界をつくってきました。もちろん、それらは必要な仕組みです。けれども、自然保護のような複雑な課題に向き合うとき、その境界が時に壁になってしまうことがあります。今回の記事に共通していたのは、「境界を越えること」の重要性でした。
国を越える。組織を越える。立場を越える。そして価値観の違いを越える。持続可能な未来は、一つの組織や一人の英雄によって生まれるものではありません。異なる主体が協力しながらつくり上げていくものなのだと思います。
XやNoteには自動翻訳が搭載されて、言語の壁がだんだんと取り壊されています。良い事例や悪い事例どちらも共有されていく時代です。そんな時代間違った翻訳で誤解が広まることも想定されます。当初は問題が発生しますが、収束して分かり合う時代がくるのだとみています。
言葉ではなく、体験の共有、責任の共有が必要な時代です。
明日への問い
あなたが取り組んでいる課題は、誰と協力すればもっと前に進むでしょうか。また、自分自身が無意識に引いている「境界線」はないでしょうか。その境界を越えた先に、新しい可能性が広がっているかもしれません。
参考文献
アメリカ援助と自然保護
The Future of Conservation Without U.S. Aid
https://www.biographic.com/the-future-of-conservation-without-us-aid/
WWFとセイコーエプソンの国際企業提携
WWFとセイコーエプソンの国際企業提携
https://corporate.epson/en/news/2026/260514.html
ヨーロッパの渡り鳥保全
Shared Skies, Shared Responsibility: Recovering Europe’s Migratory Birds
https://www.birdlife.org/news/2026/06/12/shared-skies-shared-responsibility-recovering-europes-migratory-birds/
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予算が確保できず、大型・中小コンサルティング会社費用はあわない・・・、気軽に相談ができないといった小さな団体の皆様向けです。大学生の頃からNGO・NPO法人様向けの支援を視野にキャリアを積んできました。

前職の会社の新卒採用ページに掲載されていた内容です。個人としても自然を探求して行った結果、結婚、移住、独立、ベリー園継承、趣味バードウォッチング、自然散策とライフステージが変わって充実してきました。そんな私を変えてくれた自然に対してできる範囲内で恩返しを初めています。
私個人は、農園の継承を通じて、生物環境の維持と人が関わる場の創出を実現していきます。またこれまで実務で大企業から中小企業様向けに提供させていただいたデジタルマーケティングの手法を、自然に関わる第三セクターでご支援させていただきます。
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