先日、歯医者を変えました。新しい歯医者で診察を受けながら、「これってWebサイトの改善やコンサルティングとまったく同じだな」と感じることがありました。特に印象に残ったのは、現状を把握し、課題を説明し、改善策を提案するまでの一連の流れです。一方で、専門家の仕事として、もう少し踏み込んでほしいと感じた部分もありました。
今回は、歯医者での体験を通じて考えた、Webサイト改善とコンサルティングのあり方について書いてみます。
なぜ、歯医者を乗り換えたのか?
以前通っていた歯医者は、地域でも評判のよい歯医者でした。料金が比較的安く、先生の腕もよいと感じていました。ただ、一つ困ったことがありました。人気があるため、予約が取れるのは約2週間先だったのです。歯に気になるところがあって、できるだけ早く診てもらいたいと思っても、なかなかスケジュールが合いません。また、振り返ってみると、常に次々と患者さんの予約が入っており、診察も慌ただしい印象でした。ヒアリングに十分な時間が取られているとは感じられず、どこか機械的に進んでいるようにも思えました。
もちろん、短時間で的確に診察することも専門家の技術です。ただ、私が求めていたのは、腕のよさや価格の安さだけではありませんでした。
気になったときに相談できること。そして、自分の状態について丁寧に説明してもらえること。
この二つも、私にとって重要な価値だったのです。そこで、別の歯医者に行ってみることにしました。
新しい歯医者で感じた、サービス体験の違い
今回の歯医者では、比較的スムーズに予約を取ることができました。
初診の流れは次のとおりです。
- マイナンバーカードで受付
- ヒアリングシートの記入
- 口の中の観察
- 専用機械による撮影
- 撮影結果をもとにした現状説明
- 気になっているところの相談
- クリーニング
- 現在の課題の指摘と改善提案
- 次回の予定の確認
特によかったのは、診察やクリーニングが慌ただしくなく、丁寧に進められたことです。自分が気になっていたことを相談できただけでなく、これまで認識していなかった課題も指摘してもらえました。そして、その課題に対して、今後どうすればよいのかという提案もありました。単に歯をきれいにしてもらっただけではなく、自分の口の中の状態を以前より理解できたことに価値を感じました。
1. 顧客が求める価値は、価格や技術力だけではない
今回、最初に気づいたのは、サービスを選ぶ基準についてです。以前の歯医者は、価格と技術力という点では魅力的でした。しかし、私が必要としているタイミングで予約が取れず、十分に相談できないことが不満につながっていました。一方、新しい歯医者では、予約の取りやすさや丁寧なヒアリングに価値を感じました。
これはWebサイトのマーケティングでも同じです。
企業は、自社の強みとして「高品質」「低価格」「豊富な実績」などを訴求しがちです。しかし、顧客が本当に求めているものは、それだけではありません。例えば、Webコンサルティングを依頼する企業であれば、専門知識の豊富さだけでなく、相談のしやすさ、対応の速さ、自社の事情を理解してくれることも重要かもしれません。
企業が考える強みと、顧客が価値を感じるポイントは、必ずしも一致しないのです。だからこそ、Webサイトの戦略設計では、顧客が何を基準にサービスを選ぶのかを理解する必要があります。
2. 受付|最初の体験でストレスを感じさせない
今回の受付は、マイナンバーカードを利用してスムーズに完了しました。面倒な手続きが少ないだけで、利用者としては気持ちがよいものです。Webサイトでも同じことがいえます。
問い合わせフォームの入力項目が多かったり、会員登録の手順が複雑だったりすると、利用者は途中で離脱してしまう可能性があります。これはUX(ユーザー体験)やEFO(入力フォーム最適化)の考え方です。サービスの価値を伝えるだけでなく、その価値にたどり着くまでの負担を減らすことも重要です。
3. ヒアリング|数字を見る前に、相手の悩みを知る
受付後はヒアリングシートを記入し、現在気になっていることを伝えました。Webサイト改善でも、最初に必要なのはヒアリングです。例えば、経営者から「問い合わせを増やしたい」という相談を受けたとします。しかし、なぜ問い合わせを増やしたいのでしょうか。新規顧客を獲得したいのか、特定のサービスの売上を伸ばしたいのか、それとも既存顧客への依存を減らしたいのか。目的によって、取り組むべき施策は変わります。だからこそ、いきなりWebサイトを分析するのではなく、事業の目的や現在の悩みを理解することが重要です。また、ヒアリングには時間的な余裕も必要です。質問項目を機械的に確認するだけでは、本人も認識していない悩みや、本当に解決したい問題を十分に把握できないかもしれません。
4. 撮影と観察|感覚ではなく、事実を把握する
続いて、口の中を観察してもらい、専用の機械で撮影しました。自分では見えない部分も、専門家の目と機械によって確認できます。これはWebサイトでいうアクセス解析やユーザー行動分析に相当します。
例えば、Google Analytics 4(GA4)でアクセス状況を確認したり、Microsoft Clarityで利用者の操作状況を観察したりすることです。ただし、データを取得すること自体が目的ではありません。歯医者で撮影する目的は、写真を集めることではなく、口の中の状態を把握して適切な治療につなげることです。Webサイトでも、何を判断するためにデータを取得するのかが重要になります。
5. 現状説明|専門家だけが理解していても意味がない
撮影後は席に戻り、現在の口の中の状態について説明を受けました。ここが特に重要だと感じました。専門家が問題を理解していても、患者本人が理解していなければ、納得して治療を受けることは難しいからです。Webサイト改善でも、分析結果を報告するだけでは不十分です。「コンバージョン率が低い」「途中離脱が多い」といった数字を伝えるだけでなく、何が起きていて、事業にどのような影響があるのかを説明する必要があります。
分析の価値は、数字を示すことではなく、相手が状況を理解し、意思決定できるようにすることにあります。
6. 気になるところを相談|データと本人の認識をすり合わせる
現状の説明を受けた後、自分が気になっているところについても相談しました。これはWebサイト改善における定性調査と似ています。アクセス解析だけでは、利用者が何に困っているのか、なぜ行動しなかったのかを完全には理解できません。数字から見える問題と、実際に利用者が感じている問題は、必ずしも一致しないからです。そのため、定量分析に加えて、インタビューやアンケートなどを組み合わせることが重要になります。客観的なデータと当事者の声を組み合わせることで、課題の理解が深まります。
7. クリーニング|できることから改善する
現状を確認し、説明を受けたうえで、クリーニングに進みました。Webサイト改善も同じです。課題が見つかったら、優先順位を決めて施策を実行します。
例えば、問い合わせフォームの入力負担が大きいのであれば、不要な項目を減らす。サービスの価値が伝わっていないのであれば、ファーストビューの訴求を見直す。ただし、Webサイトの場合、施策を実施したからといって必ず成果が出るとは限りません。そのため、改善施策は仮説として設計し、必要に応じてA/Bテストなどで検証します。施策を実行することと、成果が出ることは別なのです。
8. 改善後の説明|施策を実施して終わりにしない
クリーニング後には、現在の状態について改めて説明を受け、今後の課題や対処方法について提案してもらいました。特によかったのは、自分では認識していなかった課題も指摘してもらえたことです。これは専門家に相談する大きな価値だと思います。Webサイト改善でも、依頼された箇所を修正するだけではなく、分析を通じて新たな課題を発見し、改善案を提案することが重要です。また、施策の実施後には、何が変わったのかを確認する必要があります。例えば、フォームの登録率が改善しても、その後の商談率や成約率が低下していれば、事業全体として成功したとは言い切れません。
改善した箇所だけではなく、最終的な目的に近づいているかを確認することが重要です。
9. 次回予約|改善を一度きりで終わらせない
最後に、次回の予定を決めました。歯の健康は、一度のクリーニングだけで維持できるものではありません。日々のケアと定期的な確認が必要です。Webサイトも同じです。利用者のニーズや競合環境は変化します。そのため、定期的にデータを確認し、課題を見直し、改善を続ける必要があります。大切なのは、単発の施策ではなく、継続的に改善できる仕組みをつくることです。
10. 一方で、足りないと感じたこと|なぜ、その問題が起きたのか?
ここまで新しい歯医者での体験を振り返ってきましたが、一つだけ物足りなかったことがあります。それは、「なぜ、今のような状態になっているのか」という原因の説明です。
口の中を観察し、撮影し、現在の状態や課題を説明してもらいました。しかし、そもそもなぜその問題が起きたのかについては、十分に理解できませんでした。
例えば、私自身にも思い当たることがあります。
- コーヒーを飲みすぎているのかもしれない
- 歯ブラシの使い方が適切ではないのかもしれない
- 歯磨き粉が自分に合っていないのかもしれない
もちろん、これらが実際の原因かどうかはわかりません。だからこそ、専門家の視点から、考えられる原因や生活習慣との関係について説明してほしかったのです。
自分では気づけない原因や、問題が生まれる仕組みを教えてもらうことにも、専門家の価値があると感じました。
Webサイト改善でも、同じことが起きている
Webサイトのコンサルティングでも、似たような場面があります。例えば、次のような課題が見つかったとします。
「ファーストビューでサービスの価値が伝わっていない」「問い合わせまでの導線がわかりづらい」「サービスの特徴は書かれているが、選ばれる理由が説明されていない」
これらは確かに改善すべき課題です。しかし、ここで考えたいのは、なぜ、そのようなWebサイトになったのかということです。もしかすると、制作前にターゲット顧客を明確にしていなかったのかもしれません。顧客が何を基準にサービスを選ぶのか、十分に調査していなかったのかもしれません。あるいは、事業戦略やマーケティング戦略とWebサイトの役割が結びついていなかった可能性もあります。つまり、目に見えているデザインの問題は、もっと上流にある戦略設計の不足から生まれているのかもしれないのです。
問題はデザインではなく、制作に至るプロセスかもしれない
ここで重要なのは、Webサイトの問題を単純にデザイナーや制作者の技術不足として捉えないことです。
「とりあえずWebサイトをつくろう」「競合サイトを参考にして、似たような構成にしよう」「デザインを新しくすれば、問い合わせが増えるだろう」
こうした進め方では、顧客理解や戦略設計が不十分なまま制作が始まってしまうことがあります。これは単なる技術や経験の問題だけではありません。
何を理解し、何を決めてから制作に進むべきかという、仕事への向き合い方の問題でもあると思います。もちろん、予算や納期、組織体制などの制約によって、十分な戦略設計ができないケースもあります。だからこそ、原因を決めつけず、当時の意思決定や制作プロセスを振り返ることが重要です。
最初に時間をかけずにあとあと乗り換えで時間もお金もかかることがあります・・・
対症療法ではなく、根本原因を考える
歯のクリーニングによって、現在の汚れを落とすことはできます。しかし、汚れがつく原因となる習慣が変わらなければ、同じ問題が繰り返されるかもしれません。Webサイトも同様です。ファーストビューを改善しても、顧客理解が不足したままでは、次に制作するページでも同じ問題が起きる可能性があります。問い合わせフォームを改善しても、顧客が何を不安に感じているのか理解していなければ、別の場所で離脱が発生するかもしれません。だからこそ、コンサルティングでは、目に見える課題だけでなく、その背景にある原因を考える必要があります。
現象を観察し、原因を考え、改善し、その結果から学ぶ。この繰り返しによって、個別の施策だけでなく、組織の意思決定や仕事の進め方そのものを改善できるようになります。
11. 歯医者の体験から考える、コンサルティングの価値
今回の体験を、Webサイト改善に置き換えると次のようになります。
| 歯医者での体験 | Webサイト改善・コンサルティング |
|---|---|
| 予約の取りやすさ | 相談のしやすさ・対応スピード |
| マイナンバーカードで受付 | UX・EFO |
| ヒアリングシート記入 | 事業目的・課題のヒアリング |
| 口内観察・機械撮影 | GA4・行動分析 |
| 撮影結果の説明 | データの可視化・課題共有 |
| 気になるところを相談 | 定性調査・仮説のすり合わせ |
| クリーニング | 改善施策の実行 |
| 新たな課題の指摘 | 潜在的な課題の発見 |
| 改善提案 | 次の施策の提案 |
| 次回予約 | 継続的な改善 |
| 原因説明への物足りなさ | 根本原因・戦略設計の分析 |
この比較から、専門家に求められる価値は、大きく三つあると考えました。
一つ目は、顧客が必要としているときに、適切に対応できること。
どれだけ高い技術を持っていても、顧客が必要としているタイミングで相談できなければ、その価値を十分に届けられない場合があります。
二つ目は、顧客自身が認識していない課題を発見できること。
依頼されたことだけを実行するのではなく、専門家の知識や経験によって新たな気づきを提供することです。
三つ目は、問題が起きた根本原因を考え、再発を防ぐこと。
目の前の問題を改善するだけでなく、同じ問題が繰り返されないように、仕事の進め方や意思決定の仕組みまで見直すことです。
まとめ|優れたコンサルティングは、問題を解決するだけでは終わらない
今回、歯医者を乗り換えたことで、サービスの価値について改めて考える機会になりました。以前の歯医者は、価格や技術力に魅力がありました。一方、新しい歯医者では、予約の取りやすさや丁寧なヒアリング、認識していなかった課題への提案に価値を感じました。ただし、なぜ問題が起きたのかという原因の説明には、もう少し踏み込んでほしいとも感じました。これらは、Webサイト改善やコンサルティングにも共通することです。顧客が求めるタイミングで相談に乗り、現状を正しく把握し、課題をわかりやすく説明する。そして、顧客自身が気づいていない問題を発見し、改善策を提案する。さらに、その問題がなぜ生まれたのかを考え、同じ問題を繰り返さない仕組みをつくる。
優れたコンサルティングとは、目の前の問題を解決するだけでなく、その問題が生まれた原因を理解し、繰り返さない仕組みをつくることだと思います。そして顧客自身が原因に向き合い解決できる状態にできること
Webサイトを改善するだけでなく、Webサイトをつくり、運用し、改善する組織の考え方まで変えていく。今回の歯医者での体験は、そんなコンサルティングの本質を考えるきっかけになりました。
Webサイトの課題を、根本原因から考える|観省庵のコンサルティング
観省庵(かんせいあん)は、企業やNPO・NGOを対象に、デジタルマーケティングの分析・改善を支援しています。大切にしているのは、「何を改善するか」の前に、「なぜ、その問題が起きているのか」を考えることです。Webサイトのアクセス数が増えない。問い合わせにつながらない。GA4を導入したものの、数字をどのように活用すればよいかわからない。こうした課題に対して、単に施策を提案するだけでなく、事業の目的や顧客の行動、これまでの意思決定を整理しながら、改善の方向性を一緒に考えます。
観省庵がお手伝いできること
1. Webサイトの現状分析・課題発見
GA4やSearch Console、ユーザー行動分析ツールなどを活用し、集客・回遊・コンバージョンの課題を整理します。
2. Webマーケティング戦略・改善提案
誰に、どのような価値を、どう伝えるべきか。顧客理解や事業目的に立ち返り、Webサイトの改善方針を考えます。
3. データ分析の伴走・改善体制の構築
分析結果を報告するだけでなく、施策の優先順位づけ、実行後の振り返り、次の改善につなげる仕組みづくりを支援します。
こんな方はご相談ください
- Webサイトを運営しているが、何を改善すべきかわからない
- Web担当者がおらず、専門家の視点から課題を整理してほしい
- 制作会社から改善提案を受けているが、根拠がわからない
- GA4などのデータを、実際の事業判断に活用したい
- 単発の施策ではなく、継続的に改善できる体制をつくりたい
観省庵では、スポットでのご相談から、継続的なデータ分析・マーケティング改善の伴走まで対応しています。まずは現在感じている課題をお聞かせください。
問題が明確になっていなくても構いません。現状を一緒に整理するところから始められます。
観省庵のサービス紹介・お問い合わせ
- サービス一覧:https://kanseian.earth/service/
- お問い合わせ:https://kanseian.earth/
伝えたい人に、価値は届いているだろうか。顧客について学び、企業の判断を変えるリズムづくりに伴走します。
