NPO・NGOの広報活動では、SNSの投稿回数やホームページのアクセス数を成果として報告することがあります。しかし、SNSのフォロワーが増えたからといって、寄付者やボランティアが増えるとは限りません。ホームページへの訪問者が増えても、団体の活動に共感し、継続的に支援してくれる人が増えているかは別の問題です。
では、NPOの広報活動は何を基準に評価すればよいのでしょうか。その答えの一つが、KPI(重要業績評価指標)を使って、認知から寄付・参加・継続支援までの変化を可視化することです。
本記事では、NPO・NGOの代表者や広報担当者に向けて、広報KPIの考え方、具体的な指標、GA4を使った効果測定、少人数でも実践できる改善方法を解説します。
NPOの広報にKPIが必要な理由
広報活動の目的は、情報を発信することだけではない
NPOの広報活動には、社会課題を知ってもらうこと、活動への共感を広げること、寄付やボランティアへの参加を促すことなど、複数の役割があります。
たとえば、自然保護団体が湿原の保全活動をSNSで紹介したとします。投稿が1万回表示されたとしても、その数字だけでは活動の成果を判断できません。その投稿をきっかけに、湿原の現状を知った人がいたかもしれません。団体のホームページを訪れ、活動内容を詳しく調べた人もいるでしょう。さらに、寄付やボランティアに参加した人がいるかもしれません。広報の成果を評価するには、こうした段階ごとの変化を捉える必要があります。
日本の寄付市場は拡大している一方、信頼の形成が課題
日本ファンドレイジング協会の『寄付白書2025』によると、2024年の日本の個人寄付総額は推計2兆261億円となり、過去最高額に達しました。このうち、ふるさと納税を除いた寄付総額は7,533億円です。
また、同白書では、寄付に対する意識について、次のような調査結果が示されています。
- 寄付金が適切に使われているか不安を感じる人:74.1%
- 寄付を未来の社会への投資と考える人:58.9%
出典:日本ファンドレイジング協会『寄付白書2025』
この調査から、寄付への前向きな意識が存在する一方で、寄付金の使途に不安を抱く人も多いことがわかります。そのため、NPOの広報では、活動を広く知ってもらうことに加えて、資金の使途や活動成果をわかりやすく説明することが重要です。(ただし、この統計は日本の寄付市場全体に関するものであり、個別のNPOで同じ割合の人が不安を感じていることを示すものではありません)
NPOの広報KPIは「認知・関心・行動・継続・再訪」の5段階で考える
NPOの広報KPIを設計するときは、支援者との関係がどのように変化するかを5段階で考えると整理しやすくなります。
1. 認知:社会課題や団体の存在を知る
最初の段階は、社会課題や団体の存在を知ってもらうことです。
主なKPIには、次のようなものがあります。
- Google検索の表示回数・クリック回数
- SNSのリーチ数
- ホームページの新規ユーザー数
- 団体名の指名検索数
2. 関心:活動内容を理解し、共感する
次に、活動内容を詳しく知り、団体への関心を深めてもらいます。
主なKPIは次のとおりです。
- 活動紹介ページの閲覧数
- 活動報告の閲覧数
- 資料ダウンロード数
- イベント申込数
3. 行動:寄付・会員登録・ボランティア参加
活動への関心が、実際の支援行動につながったかを確認します。
主なKPIは次のとおりです。
- 寄付完了件数
- 寄付コンバージョン率
- 寄付金額・寄付回数
- 新規会員登録数
- ボランティア参加者数
4. 継続:支援を続け、団体との関係を深める
一度支援した人との関係が継続しているかを確認します。
主なKPIは次のとおりです。
- 寄付者維持率
- 継続寄付率
- ボランティア再参加率
- イベントへの再参加者数
- 脱退数
5. 再訪:団体のことを知り、再度訪問する
ページを離れたあとも、自身で再度訪問できている
主なKPIは次のとおりです。
- 団体名を含む指名検索数
- 再来訪数
- メールやLINE等によるコミュニケーションからの訪問
など
この5段階は、広報成果を整理するための実務上のモデルです。すべての支援者が必ずこの順番で行動するわけではありません。複数の接点を通じて関係が深まることを前提に、KPIを設計する必要があります。
NPOの広報KPI一覧|目的別に使える指標
広報活動の成果を可視化するために、まずは以下の指標を整理しましょう。
| 段階 | KPI | 指標の意味 |
|---|---|---|
| 認知 | 検索表示回数 | Google検索結果に表示された回数 |
| SNSリーチ数 | 投稿が届いたアカウント数 | |
| 新規ユーザー数 | 初めてWebサイトを訪れたユーザー数 | |
| 関心 | 活動紹介ページ閲覧数 | 活動情報が閲覧された回数 |
| 寄付の流れページ閲覧数 | 寄付の流れページが閲覧された回数 | |
| イベント申込率 | 対象訪問者のうち申し込んだ割合 | |
| 行動 | 寄付完了件数 | 完了した寄付の件数 |
| 寄付CVR | 対象訪問者のうち寄付した割合 | |
| 新規支援者数 | 新たに支援を開始した人数 | |
| 継続 | 寄付者維持率 | 前期の寄付者のうち今期も寄付した割合 |
| 継続寄付率 | 定義した対象者のうち継続寄付を行う割合 | |
| ボランティア再参加率 | 再び活動に参加した人の割合 | |
| 再訪 | 団体名含む指名検索数 | 明確に団体を認識して来訪してくれた数 |
大切なのは、すべてのKPIを追いかけることではありません。たとえば、寄付者を増やしたい団体なら、寄付完了件数、寄付CVR、継続寄付率を優先します。一方、社会課題の認知拡大が目的なら、検索表示回数や認知度調査を重視する方が適切です。なお、検索表示回数とSNSリーチ数は定義や集計方法が異なるため、単純に合計して「認知人数」とすることはできません。
KPIとKGIの違い|最終目標から逆算する
KPIを設定する前に、KGI(重要目標達成指標)を決める必要があります。KGIは、最終的に達成したい成果を表す指標です。KPIは、その達成に向けた途中の状態を確認するために使います。
たとえば、年間の寄付収入を増やすことを目標とする場合、次のように整理できます。
KGI:年間寄付収入600万円
- 新規寄付収入:200万円
- 既存・継続寄付収入:400万円
※上記は説明用の架空の目標値です。
新規寄付収入は、さらに次のように分解できます。
新規寄付収入 = 新規寄付件数 × 平均寄付額
仮に平均寄付額が5,000円なら、200万円の新規寄付収入を得るには400件の寄付が必要です。
Webサイト経由の寄付だけを考える場合は、次のように分解できます。
Web寄付収入 = 訪問者数 × 寄付CVR × 平均寄付額
この式を使えば、訪問者数を増やすべきか、寄付CVRを改善すべきか、検討するための出発点ができます。
詳しくはこちらの記事をご覧ください。Googleさんにも評価されているページです。KFSの概念も重要です。
GA4を使ってNPOの広報成果を測定する方法
Webサイトの広報成果を把握するには、無料で使えるGoogle Analytics 4(GA4)が役立ちます。GA4では、ページの閲覧だけでなく、ユーザーの行動をイベントとして記録できます。
Googleの公式ドキュメントでは、問い合わせ送信にgenerate_lead、アカウント登録にsign_upなどの推奨イベントが用意されています。
NPOのサイトでは、次のような計測設計が考えられます。
| 計測したい行動 | GA4イベント例 | 用途 |
|---|---|---|
| 活動紹介の閲覧 | page_view | 活動への関心 |
| 寄付ページへの遷移 | donation_click(※パラメータで取得します。) | 寄付意向の把握 |
| 寄付完了 | donation_complete | 寄付完了 |
| ボランティア申込完了 | generate_lead | 参加申込 |
| ニュースレター登録 | sign_upまたは独自イベント | 継続的な接点 |
| 資料ダウンロード | file_download | 情報収集行動 |
donation_clickやdonation_completeは独自に定義するカスタムイベント名の例です。GA4に自動で用意されているイベントではありません。また、外部の寄付決済サービスを利用する場合は、寄付完了情報を取得できるか確認する必要があります。寄付ボタンのクリック数だけを寄付完了件数として扱ってはいけません。
GA4だけでは継続寄付の全体像は把握できない
GA4はWebサイト上の行動を測定するのに適していますが、支援者との長期的な関係をすべて把握できるわけではありません。たとえば、寄付者が銀行振込で寄付した場合や、イベント会場で現金を寄付した場合、その情報は通常GA4だけでは把握できません。継続寄付率や寄付者維持率を正確に計算するには、寄付管理システムやCRMなどの情報と組み合わせる必要があります。最近では個人情報の取り扱いに配慮し、GA4に氏名やメールアドレスなどの個人識別情報を送信しない設計も重要です。
支援者との関係性を測るKPIも必要
NPOの広報成果を寄付金額だけで評価すると、重要な変化を見落とすことがあります。たとえば、今月の寄付額が増えていなくても、活動報告を継続して読んでくれる人や、イベントに繰り返し参加する人が増えているかもしれません。こうした関係性の変化は、将来の寄付や活動参加につながる可能性があります。
そのため、次のような指標も検討しましょう。
寄付者維持率
前年に寄付した人のうち、今年も寄付した人の割合です。
寄付者維持率 = 前年と今年の両方に寄付した人数 ÷ 前年の寄付者数 × 100
たとえば、前年の寄付者が100人で、そのうち今年も寄付した人が60人なら、寄付者維持率は60%です。この数値を継続的に確認することで、既存支援者との関係が維持されているかを把握できます。
ボランティア再参加率
一度参加した人が、再び活動に参加した割合です。再参加率が低い場合は、活動への満足度、参加後のコミュニケーション、次回参加の案内などを調べるきっかけになります。ただし、再参加率の低下だけで満足度が低いと判断することはできません。活動の開催頻度や参加者の生活環境も影響するためです。
支援者の理解度・信頼度
認知や共感をより直接的に把握したい場合は、アンケートも有効です。たとえば、次のような質問が考えられます。
- 団体が解決しようとしている社会課題を理解していますか?
- 寄付金がどのように使われているか理解していますか?
- 団体の活動を信頼できると感じますか?
- 今後も活動に参加・支援したいと思いますか?
回答を定期的に集めれば、Webアクセスだけでは把握できない意識の変化を観察できます。ただし、回答者の偏りに注意し、調査対象・質問文・実施方法をできるだけそろえて比較する必要があります。
少人数のNPOが広報KPIを運用する5つの手順
KPIを設計しても、毎月大量の数字を集計するだけでは改善につながりません。限られた人員で運用するには、最小限の指標から始めることが大切です。
STEP1:広報によって実現したい変化を決める
まず、「誰に、どのような変化が起きてほしいか」を言葉にします。たとえば自然保護団体なら、「地域の自然環境の問題を知ってもらう」だけでなく、「保全活動への参加者が増える」「継続的な支援者が増える」といった目標を設定します。
STEP2:重要なKPIを3〜5個に絞る
最初から数十個の指標を管理する必要はありません。寄付獲得が主目的なら、たとえば「新規寄付者数」「寄付完了率」「寄付者維持率」「寄付収入」の4つから始められます。
実際のコンサルティングの現場では、結果指標だけでなく、プロセスの結果を見る先行指標もあわせて設定します。
例えば、団体の活動ページや、団体の実績ページの閲覧数などです。これらのページをみたあとに寄付行動に繋がりやすい場合は、認知コンテンツから団体の活動・実績ページへの導線を強化したりします。
STEP3:データの取得方法を決める
Search Consoleでは検索流入、GA4ではサイト内の行動、寄付管理システムでは寄付実績、顧客の管理はCRMで確認。データの取得元を整理し、同じ指標を毎月同じ定義で集計できるようにします。
STEP4:月に一度、変化の原因を考える
数値が増えたか減ったかだけでなく、なぜ変化したのかを考えます。たとえば、寄付ページの閲覧数が増えたのに寄付完了件数が変わらない場合、寄付フォームの使いやすさや、寄付前に必要な情報が不足していないかを調べます。ただし、数字の変化だけで原因を断定せず、ユーザー調査や改善前後の比較などで仮説を検証します。
STEP5:次に試す改善を一つ決める
月次会議では、数値の報告だけで終わらず、次に何を改善するか決めましょう。たとえば、「活動ページで団体の特徴をわかりやすく記載する」「寄付ページに資金使途の説明を追加する」「イベント参加者向けに次回案内を送る」といった、小さな施策から始められます。
最後に・・広報KPIをコンセプトダイアグラムで整理する
KPI設計をさらに発展させる方法として、コンセプトダイアグラムの活動があります。コンセプトダイアグラムは、顧客や支援者の心理・行動の変化を可視化し、事業が目指す成果との関係を整理するための方法です。NPOの広報に活用する場合、「認知から寄付へ」という一方向の流れだけでなく、社会課題への理解や団体への信頼がどのように深まるかを考えます。たとえば、自然保護団体なら、最初は自然環境に関心がなかった人が、活動報告や現地体験を通じて課題を理解し、やがて保全活動に参加するようになるかもしれません。このような変化を図にしたのちに指標を紐づけることで、アクセス数だけでは見えなかった広報活動の役割や目的を整理できます。どんな顧客の、どんな状態の人に、どのような行動をしてもらうのか?ステップ別で考えることが重要です。顧客の態度変容をモニタリングする基盤づくりがNGO・NPO団体様には必要です。すぐに寄付につながるわけではなく、長期的な関係構築が重要です。詳しくはお問い合わせください。
まとめ|NPOの広報KPIは支援者との関係の変化を測る
NPOの広報活動では、SNSのフォロワー数やホームページの閲覧数だけで成果を判断することはできません。重要なのは、広報を通じて社会課題への理解が深まり、活動への参加や寄付につながり、その関係が継続しているかを確認することです。そのためには、認知・関心・行動・継続の4段階でKPIを整理し、団体の目的に合った指標を選ぶ必要があります。そして、KPIは単なる報告資料ではありません。次に何を改善するべきかを判断するための道具です。
広報の成果を可視化することは、数字を増やすことではなく、社会に起こしたい変化に向けて活動を改善し続けることにつながります。
数字に翻弄されるのではく、自分たちの行動の方向性がずれてないか修正するために使いましょう。貴重な寄付金をしっかり活用できる状態にもっていくことは団体のやるべき活動の一つだと考えます。実際に統計でも示されているのは上記通りです。
NPO・NGOの広報KPI設計を支援しています
観省庵では、NPO・NGOや自然保護団体を対象に、広報戦略の整理、コンセプトダイアグラム、Googleアナリティクスによるデータ分析、KPI設計、Webサイトの改善などを支援しています。
「広報の成果をどう測ればよいかわからない」「アクセス解析は導入しているが、改善に活用できていない」といった課題があれば、まずは現状を整理するところからご相談ください。
参考文献・統計資料
- 日本ファンドレイジング協会(2025)『寄付白書2025』
2024年の個人寄付総額、寄付への意識、寄付金の使途に対する不安などを参照。全国20〜79歳の男女を対象とした調査の有効回答数は5,394人。
https://jfra.jp/research - 日本ファンドレイジング協会(2025年12月2日)『寄付白書2025』発行プレスリリース
個人寄付総額2兆261億円、寄付金の使途に不安を感じる人74.1%などの統計値を参照。
https://jfra.jp/news/58784 - 内閣府(2024)『令和5年度 特定非営利活動法人に関する実態調査』
NPO法人の活動状況、経理・情報開示、デジタル化、寄付の受入状況などを扱う公的調査。NPOの組織運営や情報公開の背景資料として参照。
https://www.npo-homepage.go.jp/toukei/npojittai-chousa/2023npojittai-chousa - Google『GA4 推奨イベント』
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